助成金の申請に興味はあるものの、「何から始めればいいのか分からない」「手続きが複雑そうで不安」——そんなふうに感じていませんか?
助成金とは、国や自治体が企業の様々な取り組みを応援するために支給する、返済不要の支援金です。人件費の補助や職場環境の改善などに活用できるため、中小企業の経営者や人事担当者にとって、非常に心強い制度と言えるでしょう。
ただし、申請には細かな条件の確認や、多くの書類の準備が必要となるため、初めての方にとってはハードルが高く感じられるかもしれません。
この記事では、社労士の視点から助成金の申請の基本的な流れと、よくある注意点をわかりやすく解説します。
「助成金って難しそう…」と感じられている方にも安心して読んでいただけるよう、やさしい言葉でまとめています。ぜひ最後までご覧いただき、助成金活用の第一歩を踏み出すヒントにしていただければ幸いです。
助成金申請の基本的な流れ【5つのステップ】
助成金の申請は、単に書類を提出するだけではありません。
「どの助成金を選ぶか」から始まり、「計画の実施」「申請書類の作成・提出」など、複数のステップを、順を追って進めていく必要があります。ここでは、申請の全体像をイメージしやすいように、助成金申請の基本的な流れを5つのステップに分けてご紹介します。
STEP1|情報収集と助成金の選定
最初のステップは、どんな助成金があるのかを知り、自社に合った助成金を選ぶことです。
助成金にはさまざまな種類があり、対象となる業種や取り組み内容、従業員数などによって、申請できる制度が異なります。
例えば、「従業員を新たに雇う予定がある」「社内研修を強化したい」といった具体的な目的があれば、その内容に合った助成金を探すことが、最初の一歩になります。
- 国の助成金
厚生労働省のホームページでは、雇用関係の助成金を中心にさまざまな情報が公開されています。 - 自治体の助成金
会社のある都道府県や市区町村でも、独自の助成金制度を設けている場合があります。自治体のホームページや商工会議所などで情報を確認してみましょう。
【ここがポイント】
- 「どの助成金が使えるか」は企業の状況によって変わる!
→事業内容・従業員数・過去の受給歴などが選定のポイントになります。 - 自社の課題や目的に合った助成金を選ぶことが重要
→雇用維持、人材育成、働き方改革など、自社の取り組みに合う制度を見つけましょう。 - 最新情報をチェック!
→助成金の制度内容は、年度ごとに変更されることが多く、古い情報に基づくと申請できないケースがあります。 - 募集期間を必ず確認
→助成金には申請受付の期間が決まっており、タイミングを逃すと申請できません。
STEP2|計画書の準備と提出
申請する助成金が決まったら、必要な書類の準備に取りかかります。
多くの助成金では、「計画を立てたうえで、事前に提出する計画書」の提出が求められます。たとえば「この日に研修を始めます」「この制度を社内で導入します」といった、具体的な取組みの“前”に申請が必要なのが大きな特徴です。
この計画書を提出しないまま取り組みを始めてしまうと、要件を満たしていても助成金を受けられないケースもあるため、事前準備が非常に重要です。
計画書の様式や添付書類などは、助成金ごとに異なるため、必ず各制度の公式ホームページで最新の情報を事前に確認しましょう。
【ここがポイント!】
- “取り組み前”に書類提出が必要な助成金が多い!
→事後申請では受けられないケースもあるため、申請タイミングには要注意です。 - 早めの準備がカギ
→必要書類が多岐にわたる場合もあります。スケジュールに余裕をもって取り組みましょう。制度によっては、提出期間が決まっている場合もあります。 - 計画内容は“実行可能な範囲”で立てる
→あまりに理想的な計画を立てると、後で変更や実施が難しくなり、助成金が受けられなくなるリスクがあります。 - 不明な点は放置せず、必ず確認!
→申請要項を読んでもわからない点がある場合は、助成金の窓口や社会保険労務士に相談しましょう。
STEP3|計画の実施
計画届の提出が完了し、行政から計画の認定が出たら、いよいよ実際の取り組みをスタートします。たとえば「従業員の研修を実施する」「新しい就業規則を社内に導入する」「設備投資を行う」など、計画書に記載した内容を、計画書に、かつ要件を満たす形で実行することが求められます。
この段階で重要なのが、「実施した内容をきちんと記録として残す」ことです。助成金によっては、後の申請時に“本当に実施したかどうか”を証明するために、研修の出席記録や写真、報告書などのエビデンス(証拠資料)が必要となる場合があります。
また、計画の途中で変更が生じた場合には、必ず事前に変更届を提出する必要があります。助成金によっては、変更届を期限内に提出すれば、内容を修正したうえで引き続き申請が可能な場合もあります。
【ここがポイント!】
- 計画書どおりに実施することが大前提!
→内容やスケジュールにズレがあると、不支給となる可能性があります。 - 実施した証拠をしっかり残す!
→研修であれば、出席簿や写真、実施報告書など、日付入りで記録するのがベストです。助成金の審査では、「きちんと実施したか」「証拠がそろっているか」が重視されます。取り組みを進めながら、証拠資料の整理も並行して行いましょう。 - 変更が必要な場合は、すぐに専門家に相談!
→状況が変わっても、事前に手続きを行えば助成金を受けられる場合があります。独断で進めず、社労士などに早めに相談をしましょう。
STEP4|申請書の作成・提出
計画に沿って取り組みが完了したら、いよいよ助成金の「支給申請」を行います。
このステップでは、各助成金の様式に沿って申請書を作成し、取り組みの内容や実績、かかった費用などを正確に報告する必要があります。
また、多くの助成金では、申請時に複数の添付書類が必要です。たとえば、「研修の実施記録」「支払いを証明する領収書や振込明細」「制度導入時の就業規則の写し」など、取り組みを裏付けるエビデンス資料を添付することが求められます。さらに、提出の期限やタイミングは助成金ごとに異なるため、必ず事前に確認しておきましょう。場合によっては、「取り組み終了から2カ月以内」など短期間での申請が求められるケースもあります。
【ここがポイント!】
- 助成金ごとに申請書の様式が異なる!
→必ず最新の様式を使用しましょう。厚生労働省や都道府県労働局の公式サイトで最新版を確認してください。 - 提出期限を過ぎると申請できません!
→助成金には申請の締め切りがあります。特に、「取り組み終了から◯カ月以内」といった期限が設定されている場合が多いため、早めの準備と提出がカギです。 - 不明点はすぐ相談!
→申請書類の作成は、正確さと丁寧さが非常に重要です。申請要項を読んでも不明な点がある場合は、助成金の相談窓口や社会保険労務士に確認することで、ミスや不支給を防げます。
STEP5|審査・支給
申請書を提出した後は、労働局や助成金の管轄機関による審査が行われます。この審査では、以下のような点が確認されます。
- 助成金の支給要件を満たしているか
- 提出書類に不備や漏れがないか
- 実績が適切に証明されているか
場合によっては、追加書類の提出依頼や、担当者からのヒアリングが行われることもあります。審査を無事に通過し、受給要件を満たしていると判断されれば、“支給決定通知”が届き、指定した口座に助成金が振り込まれます。
なお、支給申請から実際の入金までには数か月程度かかるケースもあるため、スケジュールに余裕をもっておくと安心です。
【ここがポイント!】
- 審査期間は助成金によって異なる
→支給決定まで数週間〜数か月かかることもあります。計画的にスケジュールを組んでおきましょう。 - 連絡には迅速に対応を!
→追加の書類提出やヒアリングの依頼があった場合は、できるだけ早く対応することがスムーズな支給につながります。 - 支給決定後も報告義務がある場合がある
→助成金の種類によっては、実施状況や成果について報告を求められる場合もあります。支給が終わった後も、継続的な対応が必要な場合があることを覚えておきましょう。
助成金申請で注意すべきポイント
初めての助成金申請に取り組む中小企業のみなさまにとって、手続きをスムーズに進め、確実に助成金を受給するためには、いくつか注意が必要です。ここでは、申請時に押さえておきたい主な注意点を、わかりやすくご紹介します。
支給要件は「念には念を」入れて確認を!
助成金には、対象となる企業の規模(従業員数や資本金など)、業種、取り組み内容など、細かな「支給要件」がそれぞれ定められています。
「うちも対象になりそうだから大丈夫だろう」と自己判断で進めてしまうと、あとになって申請不可だったことが判明するケースも少なくありません。
申請前には必ず募集要項を隅々まで確認し、自社がすべての要件を満たしているかを丁寧にチェックしましょう。少しでも不安がある場合は、専門家への確認もおすすめです。
申請期間は「鉄の掟!」絶対に守りましょう!
助成金には、それぞれ厳格な申請期間が設けられています。締め切りが1日でも過ぎてしまうと、原則として申請は一切受け付けてもらえません。
興味のある助成金を見つけたら、まず申請期間を確認し、早めにスケジュールに組み込みましょう。情報収集と準備は、早めに始めましょう。
必要書類は「正確さ」が命!不備のない準備を!
申請には、申請書のほか、会社の登記簿謄本、出勤簿、計画書、見積書など、さまざまな添付書類が必要になります。書類に不備や不足があると、審査の遅延や申請却下につながる可能性もあります。
書類の内容や添付資料の要件は、申請要領をよく読み込み、正確に準備することが大切です。不明点があれば、助成金の窓口や社会保険労務士に相談するのが安心です。
計画内容は「具体的かつ熱意を込めて」伝えましょう
申請にあたっては、助成金をどのように活用し、どのような効果を期待しているのかを記載した計画書の提出が求められます。この計画書は、審査担当者が助成金支給の可否を判断する重要な資料です。曖昧な内容では、審査で不利になる可能性があります。
目的・方法・期待される成果を、具体的かつ丁寧に記載し、審査担当者に「この企業を応援したい」と思ってもらえるような内容を心がけましょう。
虚偽の申請は絶対にNG!
助成金を不正に受け取ろうとする行為は、法律で厳しく処罰されます。例えば、実施していない取り組みを報告したり、書類を偽造したりする行為は、重大な法令違反となります。
「もらえるならもらっておこう」と安易に考えるのは非常に危険です。企業の信頼を失うだけでなく、法的責任を問われることになります。絶対に不正な申請は行わないでください。
困ったときは「専門家に頼る」のも賢い選択!
助成金の種類は多岐にわたり、それぞれルールや申請方法が異なります。
「どの助成金が自社に合っているかわからない」「書類作成に不安がある」と感じたら、専門家である社会保険労務士に相談するのも有力な手段です。プロのサポートを受けることで、申請の確実性やスピードが高まり、結果的に時間と手間の削減にもつながります。
社労士に依頼するメリット
助成金の申請は、書類の準備や計画書の作成、提出期限の管理など、意外と手間がかかるものです。人事や総務の担当者が、通常の業務と並行して助成金の申請を行うのは、大きな負担になりがちです。さらに、申請に不慣れなまま進めてしまうと、時間や労力がかかるだけでなく、本来の業務に支障をきたすケースも少なくありません。
「申請したいけど、自分たちだけで進めるのは不安……」
そんなとき、頼りになるのが助成金の専門家である、社会保険労務士(社労士)です。ここでは、社労士に依頼することで得られる主なメリットをご紹介します。
【社労士に依頼するメリット】
- 最新の助成金情報から、自社に合った制度を提案してくれるため、効率よく活用できる
- 複雑な申請書類も、企業の状況に合わせて、ミスや漏れのないようサポートしてくれる
- 全体の流れを見据えてアドバイスをしてくれるため、不支給のリスクを大幅に減らすことができる
- 面倒な申請業務をアウトソーシングできるので、社内の人材をコア業務に集中させられる
- 社労士は、助成金だけでなく労務管理の専門家でもあるため、就業規則の見直しや人事制度の整備など、助成金に関連する労務課題もあわせて相談できる
まとめ
助成金は、返済不要で企業の成長を後押ししてくれる心強い制度です。しかし、申請には正確な情報収集や書類の準備、そして計画的な手続きが欠かせません。
もし、「自社に合う助成金が分からない」「手続きに不安がある」と感じている場合は、社労士に依頼することで、「正確・安心・効率的」な申請が実現できます。専門家のサポートを受ければ、時間や労力の負担を軽減できるだけでなく、不備による不支給リスクの回避にもつながります。
書類の作成から全体のスケジュール管理まで、プロの視点での丁寧なサポートがあれば、申請のハードルがぐっと下がり、スムーズに進めることができるでしょう。
助成金をうまく活用して会社をより良くしたい方は、ぜひ一度、社労士への相談を検討してみてください。疑問や不安がある場合でも、専門家に話すことで、きっと解決への道が見えてきます。
まずは、一歩踏み出して、最新の助成金情報をチェックすることから始めてみましょう。きっと、あなたの会社にとってプラスとなる助成金が見つかるはずです。