民泊の始め方を行政書士が徹底解説【手続き・許可申請の流れ】

民泊の始め方|申請や届出方法などをわかりやすく徹底解説

民泊は、近年の観光需要の増加やライフスタイルの変化などにより、自宅や空き家を有効活用できる新しいビジネスとして注目を集めており、副業として民泊を始める方も増えています。

皆さんの中にも、「使っていない期間に部屋を貸して副収入を得たい」「空き家を活用して収益を得たい」「二拠点生活で家を空けている土日を何か活用できないか」と考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし、民泊を始めるためには、旅館業との違いや住宅宿泊事業法への対応など、法的な手続きや許可が必要になるため、正確な知識と準備が欠かせません。

そこで本記事では、行政書士の観点から、民泊を始めるにあたって知っておきたい手続きや届出、注意点等を幅広くわかりやすく解説していきます。民泊を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

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目次

そもそも民泊とは?民泊を始める前に知っておきたい基礎知識

最近は、テレビやニュースでも取り上げられ、身近な存在となった「民泊」ですが、実は住宅宿泊事業法や自治体条例など、さまざまなルールが存在します。事前に押さえておくべき基本的な仕組みを理解しておくことで、後の手続きや運営もスムーズに進められるでしょう。ここでは、民泊を始めるにあたってまず知っておきたい基礎情報をまとめました。

民泊とは?住宅宿泊事業の概要

「民泊」とは観光客や旅行者向けにマンションの一室や戸建て住宅を一時的に提供する宿泊サービスの1つです。正式名称は「住宅宿泊事業」といい、2018年に住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)という法律が施行されたことで、民泊の内容や始め方などが定められるようになりました。

基本的に民泊は都道府県や物件所在地を管轄する自治体に必要書類を届け出るだけで始めることができます。ただし、年間180日以内での営業に限られ、宿泊施設として最低限必要なキッチンやトイレ、浴室等を備えていることが求められます。

また、民泊には家主居住型(住宅の一部を貸し出す)と家主不在型(住宅全体を貸し出す)の2種類が設けられており、収益目標やライフスタイルに応じて運営方法を選択できるのも民泊として貸し出す物件に居住しながら一部の部屋を貸し出すことも、居住せずに住宅全体を貸し出すことも可能です。

民泊(住宅宿泊事業)と簡易宿所営業・特区民泊との違いを押さえましょう

「民泊」とは一般的に、住宅宿泊事業を指すことが多いですが、観光客や旅行者向けに宿泊場所を提供する方法としては、ほかにも簡易宿所営業や特区民泊といった形態があります。民泊を始める際には、これらの違いをしっかり把握し、物件の所在地や営業スタイルに合った業態を選ぶことが成功のカギです。以下では、それぞれの特徴や営業日数、手続きの相違点などを詳しく解説します。

簡易宿所営業・特区民泊とは

簡易宿所営業

簡易宿所営業は旅館業法に基づいて、ホテルや旅館の1種として宿泊施設を有料で貸し出す形態です。カプセルホテルや貸別荘などが代表的で、有料で宿泊施設を貸し出します。

特区民泊

特区民泊は、国家戦略特別区域法で定められた形態です。国家戦略特区に指定された地域(例:東京都大田区、大阪府・大阪市など)でのみ認められ、インバウンド需要を中心に中長期滞在を想定しています。

これら簡易宿所営業や特区民泊を含めて『民泊』と呼ばれることもありますが、本記事では住宅宿泊事業を民泊として説明します。

営業日数の上限の違い

民泊と簡易宿所営業、特区民泊はそれぞれ異なる法律により規定されており、必要な要件や手続きが異なります。

最も大きな違いは営業日数の上限です。民泊(住宅宿泊事業)は年間で180日以内に営業日が限られているのに対し、簡易宿所営業、特区民泊では上限が設けられていません。

さらに、民泊(住宅宿泊事業)については各自治体が独自に条例を設け、180日よりも短い営業日数を定めている場合があります。民泊の始め方を検討する際は、物件所在地の条例を必ず確認しましょう。

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必要な手続きの違い

民泊(住宅宿泊事業)を始める場合は、自治体への届出のみで営業が可能ですが、簡易宿所営業は営業許可、特区民泊は事業認定の取得が必要です。

営業を始めるための必要な手続きにも違いがあります。

民泊の届出は必要書類を提出し、要件を満たせば受付が完了しますが、簡易宿所営業の営業許可や、特区民泊の事業認定には審査があり、要件を満たさないと営業を行うことができません。そのため、書類の準備や審査期間、審査の難易度を考慮すると、届出のみで済む民泊は比較的スムーズに始められるといえます。

業態の違いを把握し、運営規模や営業スタイルに応じて適切な手続きを選択することが重要です。

【比較表】

業態 (根拠法)民泊 (住宅宿泊事業法)簡易宿所営業 (旅館業法)特区民泊 (国家戦略特別区域法)
概要観光客や旅行者向けにマンションの一室や戸建て住宅を一時的に提供する。ホテル・旅館の1種として宿泊施設を有料で貸し出す。特定の地域内でインバウンドを中心に中長期で宿泊施設を提供する。
営業日数の上限年間180日以内※ (宿泊日数)上限なし上限なし
滞在日数の制限制限なし制限なし2泊3日以上 (最低滞在日数)
対応言語宿泊予約時点で 対応可能と提示した言語規定なし日本語以外の 1か国以上の外国語
客室面積3.3㎡×宿泊人数(内法)原則33㎡以上(内法)原則25㎡(壁芯)
入浴施設・ トイレ・洗面必要 (入浴施設はシャワー室のみでも可)必要 (入浴施設はシャワー室のみでも可)必要 (入浴施設はシャワー室のみでも可)
キッチン必要必置要件なし必要
必要な手続き住宅宿泊事業者届出簡易宿所営業許可国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業認定
※自治体が条例を制定している場合は180日よりも営業日が制限される場合あり。
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民泊、簡易宿所営業、特区民泊の選び方のポイント

民泊を始める際、民泊、簡易宿所営業、特区民泊の3つの中から、どの業態を選ぶべきか迷う方は多いと思います。選び方のポイントは①物件所在地の特性、②資金、③手続きの難易度と所要期間の3つです。

①物件所在地の特性

観光地に近いか、長期滞在の需要があるか、国家戦略特区に指定されているかなど、地域によって適した業態が変わります。例えば、長期滞在を望むゲストが多いエリアなら簡易宿所営業や特区民泊が収益面で有利になる場合もあります。

②資金(改装・改修の必要性)

簡易宿所営業は旅館業法に基づくため、設備や面積要件が厳しい場合があり、改装費が高額になることもあります。一方、民泊は比較的要件が緩やかで初期コストを抑えやすいものの、180日という営業日数制限があるため、収益が限定される点には注意が必要です。

③手続きの難易度と所要期間

民泊、簡易宿所営業、特区民泊を比較して、営業開始前の手続きが最も簡単なのが民泊です。民泊の場合、営業開始までは最短2~3週間と所要期間が短く、手軽に始められることがメリットの1つです。簡易宿所営業は最短でも2~3カ月、特区民泊は1~2カ月かかります。

業態民泊簡易宿所営業特区民泊
初期投資低い高い中程度
収益性
手続きの難易度易しい難しいやや難しい
手続きの所要期間(最短)2~3週間2~3カ月1~2カ月

①物件所在地の特性、②資金、③手続きの難易度と所要期間等のポイントを比較し、自身に合った業態を選択しましょう。

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民泊を始めるために必要な手続き

民泊(住宅宿泊事業)をスムーズに始めるには、物件選定から消防設備の整備、周辺住民への周知、そして自治体への届け出まで、多岐にわたるステップを踏む必要があります。ここでは、民泊の始め方に沿って、実際に営業を開始するまでの流れを詳しく解説します。

民泊に利用する物件の選定をする

民泊の営業を行う物件や建物が決まっていない場合は物件の選定を行いましょう。駅からの距離や周辺環境等、集客面での利便性だけでなく、民泊を行える物件の要件が揃っているかを確認することも重要です。

  • 広さの要件:居室は壁の内側の面積が宿泊者1名×3.3㎡以上であること
  • 設備の要件:台所・浴室・トイレ・洗面設備が完備されていること
  • 用途地域の制限:民泊の営業自体が制限されているエリアではないこと
  • 営業日数の制限:条例で営業日数の制限がされていないこと

特に営業日数の制限はエリアにより異なります。エリアを管轄する自治体が条例で180日よりも少ない日数に制限したり、平日の営業を制限(土日祝のみ営業可に)したりしている場合があるため注意しましょう。

また、賃貸物件を借りて民泊を行う場合は、その物件で民泊の営業が可能か大家さんや仲介会社等に確認しましょう。「転貸可能」と契約書に記載があっても、民泊の利用は認めないという場合もありますのでこの点も注意が必要です。なお、分譲マンションで行う場合は管理組合に確認しましょう。

民泊の営業を行う物件や建物が決まっている場合や既に所有している物件で民泊を行う場合でも、要件が揃っているか、民泊の営業が可能かをしっかり確認しましょう。

保健所・消防署に相談する

民泊の営業を行う物件や建物の目途が立ったら、物件の所在地を管轄する保健所と消防署に事前相談をします。
その際、使用予定物件の住所や概要、間取り、面積等が分かるような資料を持参しましょう。賃貸物件や分譲マンションの場合は不動産会社でもらえる住所や契約情報等がまとめられた資料(マイソク等)を持っていくと良いでしょう。

マイソクのイメージ
マイソクのイメージ

保健所では法律やガイドライン、条例等を前提にその物件で民泊が可能かを相談し、物件に不足事項はないか、届出に必要な書類、その自治体独自の運営ルール等を確認します。各保健所で細かい内容に違いがありますので、必ず管轄の保健所窓口で確認しましょう。

消防署では物件に必要な消防設備について相談を行います。民泊の営業を始めるためには必要な消防設備を整備した後、管轄の消防署の検査を受けて「消防法令適合通知書」という書類を発行してもらう必要があります。物件の構造や条件により必要な消防設備は異なる為、必ず確認しましょう。消防設備の要件は居室の床面積が50㎡を超える場合はハードルが高く、50㎡以下の場合はハードルが低い傾向があります。

保健所と消防署への事前相談の結果、検討していた物件では民泊が行えないことが判明することがありますので、事前相談は物件の契約前に行うと良いでしょう。

住宅宿泊管理事業者を選定する

民泊には家主居住型と家主不在型の2種類があります。家主居住型は民泊を利用する際に家主(オーナー)が同じ建物に滞在している形態を指します。居住しているマンションの1室を民泊として貸し出す場合や、居住する戸建て住宅の1階を民泊として貸し出す場合等がこれに当たります。

家主不在型は民泊として利用する建物に家主が居住していない形態を指します。家主不在型で民泊の営業を行う場合、民泊の利用中にトラブルが起こっても駆け付けたり、すぐに対応したりできないことが多くあります。そのため、家主不在型で民泊の営業を行う場合は住宅宿泊管理事業者に管理を委託することが義務付けられています。また、家主居住型であっても1物件に多数部屋がある場合は管理の委託が必要です。

住宅宿泊管理事業者とは、国土交通大臣の登録を受けた事業者で、家主からの委託を受けて民泊利用者への説明や鍵の管理、クレーム対応、ゴミ出しルールの告知、近隣住民とのトラブル対応等を行います。住宅宿泊管理事業者により、手数料や法定外の業務の対応範囲、対応言語等が異なりますので、サービス内容を比較して事業者を選定しましょう。

消防設備を整える

物件が確定し、事前相談で必要な要件や設備を把握したら、民泊営業を開始するために必要な修繕やリノベーションと消防設備の設置・工事を行いましょう。

消防設備の整備を終えたら、管轄の消防署へ「消防用設備等設置届出書」を図面と共に提出し、消防署の検査を受けましょう。届出の提出方法は電子申請、窓口への持参、郵送等がありますが、管轄の消防署により対応している方法が異なる場合がありますので、ご注意ください。消防署の検査を受け不備や不足がなければ「消防法令適合通知書」が発行されます。この「消防法令適合通知書」は民泊の届出(住宅宿泊事業届出)を行う際に使用します。

周辺住民へ民泊の事前周知を行う

民泊の営業を始める前に事前に周辺住民へ周知を行います。周知の要否や方法は自治体によって異なるため、物件所在地の自治体や保健所にルールを確認しましょう。

例えば、渋谷区の場合は民泊の届出をする7日前までに周辺地域の住民及び町会に「書面を用いた対面」又は「書面の交付」による周知を行うよう求められます。自治体によっては届出の15日前を目途にしていたり、説明会の開催を行う必要があったり、各々求められる内容が違います。

必要書類を揃えて届出書を提出する

民泊の届出には届出書以外にも添付書類が求められます。自治体によっては独自の様式で作成した書類の提出を求められる場合があります。届出に必要な書類は管轄の保健所で確認ができますので、事前相談の際に必ず確認するようにしましょう。

【法人で民泊を行う場合】

No住宅宿泊事業届出の添付書類(法人)
1定款又は寄付行為
2登記事項証明書[法務局]
3役員の身分証明書[本籍地のある市区町村] ※破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
4建物の登記事項証明書[法務局]
5建物の図面
6使用する建物が居住要件を満たすことの証明書類★
7賃貸の場合、民泊での利用を賃貸人(大家さん)が承諾したことを証する書類
8区分所有の建物(分譲住宅等)の場合、管理規約の写し ※管理規約に民泊の営業についての定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類
9家主不在型の場合、住宅宿泊管理業者と締結する管理受託契約の写し
10欠格事由に該当しないことを誓約する書面

【個人で民泊を行う場合】

No住宅宿泊事業届出の添付書類(個人)
1身分証明書[本籍地のある市区町村] ※破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
2未成年者で、その法定代理人が法人である場合は、その法定代理人の登記事項証明書[法務局]
3建物の登記事項証明書[法務局]
4建物の図面
5使用する建物が居住要件を満たすことの証明書類★
6賃貸の場合、民泊での利用を賃貸人(大家さん)が承諾したことを証する書類
7区分所有の建物(分譲住宅等)の場合、管理規約の写し ※管理規約に民泊の営業についての定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類
8家主不在型の場合、住宅宿泊管理業者と締結する管理受託契約の写し
9欠格事由に該当しないことを誓約する書面

★建物の居住要件とは、人が居住するための家屋であって、「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行われている家屋」「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」のいずれかに該当するものです。この要件を満たしていることを証明する書類を添付書類として提出します。
例)入居者の募集が行われている家屋→賃貸不動産情報サイトの掲載情報の写しやマイソク等

届出は国土交通省が運営する民泊制度ポータルサイト又は管轄の保健所の窓口に提出します。提出後、保健所が民泊施設の検査を行います。検査では必要な設備が整っているか、部屋の広さは十分か、衛生的な環境が保たれているか等を確認します。

民泊制度ポータルサイト「minpaku」

民泊の営業を始める

届出内容と検査で不備や不足がなければ、保健所から届出番号が通知されます。併せて住宅宿泊事業届出済の標識がもらえますので、民泊物件毎に見やすい場所に標識を貼りましょう。これにより民泊の営業が可能になります。インテリアや備品を揃え、営業を開始しましょう。

民泊制度ポータルサイトから引用:民泊制度ポータルサイト「minpaku」

民泊営業開始後の手続き

民泊営業を始めた後は、定期的な運営報告が必要となります。

毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月の偶数月の各月15日までに「宿泊させた日数」「宿泊者数」「延べ宿泊者数」「国籍別の宿泊者数」を報告します。この報告は住宅宿泊管理事業者に管理を任せていたとしても家主(オーナー)の義務なので忘れずに行いましょう。

民泊を始める手順まとめ

  • 物件選定や保健所・消防署との事前相談を経て、確実に要件をクリアする
  • 住宅宿泊管理事業者の活用を検討し、家主不在型の民泊でのリスクを低減
  • 消防設備の整備や周辺住民への周知など、自治体の条例ルールにしっかり対応
  • 届出に必要な書類や添付資料をそろえ、保健所の検査で合格すれば営業開始
  • 開業後は定期報告を忘れずに行う

民泊の始め方は一見複雑に思えるかもしれませんが、正しい手順を踏みながら進めればスムーズに開業することができます。特に初めての方や忙しい方は、行政書士などの専門家に相談することで、申請書類の作成や手続きを効率的に進められます。ぜひ参考にしながら、安全・安心な民泊運営をスタートしましょう。

民泊を181日以上営業したい場合は簡易宿所営業許可が必要

簡易宿所営業は営業日の制限なし

民泊(住宅宿泊事業)は法律で年間180日以下に営業が制限されています。しかし365日制限なく営業したいという方も多いでしょう。181日以上宿泊施設の営業をしたい場合は簡易宿所営業許可の取得を目指しましょう。

簡易宿所とはホテル・旅館の1種として宿泊施設を有料で貸し出す業態で旅館業法に定められています。簡易宿所営業の許可を取得することで365日制限なく営業を行うことができます。ただし、簡易宿所営業の許可は民泊の届出とは根拠になる法律も手続きも異なり、より厳しい要件・審査があるため入念な事前準備が必要です。

簡易宿所に利用できる物件を探す

まずは民泊と同様に簡易宿所として営業を行う物件を探します。この際、民泊とは異なる簡易宿所の要件に合致する物件を探す必要があります。

  • 広さの要件:客室の床面積が33㎡以上であること
    ※ただし、建物の宿泊施設に使用する部分の床面積合計が100㎡を超える場合は建物の用途変更(「住宅」から「旅館・ホテル」への変更)が必要
  • 設備の要件:宿泊者数に足る適切な数の浴室・トイレ・洗面設備が完備されていること
  • 用途地域の制限:宿泊施設の営業自体が制限されているエリアではないこと(住宅専用のエリアではないこと)
  • 建物自体の適法性:建物自体が建築基準法の規定に合致していること
  • 土地周辺の既存施設による制限:物件がある土地の周囲約100m以内に学校や幼稚園等がないこと

特に③の「用途地域の制限」については注意が必要です。行政が定める土地の使用用途(用途地域)が「住宅専用」であるエリアの場合は簡易宿所営業の許可が取れません。

⑤土地周辺の既存施設による制限については必須要件ではありませんが、周辺に学校や幼稚園、児童福祉施設等がある場合は許可取得までに通常より時間がかかります。これは周辺の児童関連施設の施設環境を守る為、宿泊施設の設置によって周辺の児童関連施設に対して悪影響を及ぼさないか保健所が教育委員会に意見を求める必要があるためです。

賃貸物件でも所有物件でも簡易宿所営業許可の申請は可能です。ただし、民泊よりも建物や設備の要件が厳しいため、建物に大幅な改装・改修が必要になる場合が多くあります。そのため、その物件で簡易宿所(旅館業)の営業が可能か、改築・増築・再建築等が可能か大家さんや仲介会社等に確認しましょう。

保健所・消防署・市役所に事前相談する

簡易宿所営業を行う物件や建物の目途が立ったら、物件の所在地を管轄する保健所と消防署、市役所の建築指導課に事前相談をします。

保健所には予定物件の図面を持参しましょう。初回相談の際は民泊同様に不動産会社でもらえる住所や契約情報等がまとめられた資料(マイソク等)で問題ありません。既に所有している物件の場合はその時点での図面を持参しましょう。保健所では図面を確認した上で、どのようにリフォームを行えば許可を取得できるか詳細に相談することが可能です。自治体の条例により施設の要件や申請時に提出すべき書類が異なる為、必ず管轄の保健所に確認をしましょう。また、相談した内容を反映した図面(完成予定図面)を保健所に確認してもらう必要がありますので、リフォーム業者への相談を同時並行で進めましょう。

消防署では簡易宿所という旅館業の1種として備えておかなければならない消防設備について相談を行います。民泊同様に営業を始めるためには必要な消防設備を整備した後、管轄の消防署の検査を受けて「消防法令適合通知書」を発行してもらう必要があります。物件の構造や条件により必要な消防設備は異なる為、必ず確認しましょう。

市役所の建築指導課では建築基準法の観点から物件が適法であるかを確認します。特に建物の用途変更が必要な物件の場合は注意が必要です。

各所での事前相談の結果、検討していた物件では簡易宿所が行えないことが判明することがありますので、事前相談は物件の契約前に行うと良いでしょう。

物件のリフォームと消防設備を整える

物件が確定し、事前相談で確認した許可に必要な要件を反映させた図面が完成したら、許可を得るために必要なリフォームや修繕と消防設備の設置・工事を行いましょう。

消防設備の整備を終えたら、管轄の消防署へ「消防用設備等設置届出書」を図面と共に提出し、消防署の検査を受けましょう。消防署の検査を受け不備や不足がなければ「消防法令適合通知書」が発行されます。この「消防法令適合通知書」は簡易宿所営業の許可申請時に提出が必要です。

必要な書類を揃えて保健所へ申請する

工事や消防検査等すべて終えたら必要書類を揃えて保健所に申請書類を提出します。不足・不備があれば補正や追加書類の提出を求められる場合がありますので、できるだけ申請前に提出書類を保健所で確認してもらい、不備がない状態になってから申請を行うようにしましょう。申請は保健所の窓口に書類を提出します。

No簡易宿所営業許可申請の添付書類
1法人の場合は定款又は寄付行為の写し
2構造設備の概要書
3建物周辺の見取図(半径300m程度)
4配置図、正面図及び側面図
5各階平面図
6給水系統図
7照明設備系統図
8換気設備図
9消防法令適合通知書
10賃貸の場合、賃貸借契約書
11区分所有の建物(分譲住宅等)の場合、管理規約の写し ※管理規約に旅館業の営業についての定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類

申請書を提出した後、書類や施設自体に不備や不足がなければ保健所が施設の立会検査を行います。実際に施設の中に入り、必要な施設が整っているかを確認します。特に入浴設備やトイレ、洗面等の水回りは感染症等の危険性を考慮し入念にチェックが入ります。この検査の基準も自治体により多少異なりますが、申請前に保健所で事前相談をする際に詳細に教えてもらえますので、必ず確認するようにしておきましょう。

許可証を受け取って営業を始める

保健所の審査・検査が完了すると許可証が交付されますので、保健所に受け取りに行きましょう。許可書を受け取り、施設に掲示することで営業を開始できます。

申請から許可書の交付までは2か月程度かかりますが、書類の不備や関係各所への意見照会の有無、立会検査のタイミング等によってはさらに時間を要する場合があります。余裕を持ったスケジュールで進めるようにしましょう。

民泊が注目される理由

民泊はコロナ禍明けの観光需要の回復や円安による訪日外国人の増加を背景に、今後さらに需要が見込まれるビジネスです。特に都市部で深刻化している宿泊施設不足を補う存在としても注目され、民泊運営を通じて新たな収益源を確保しようとする物件オーナーが増えています。

民泊を始めるメリット

民泊を始めるメリットとして、主に以下の3点が挙げられます。

  1. 新たな収入源を確保できる
    空室や空き家を、短期的に貸し出すことで収益化できるのが民泊の魅力です。都市部や観光地なら、需要の高い時期に柔軟に料金を設定できるため、大きな収益アップが期待できます。
  2. 空き家や空室を有効活用できる
    使用していない物件があるなら、家賃収入を得る手段として民泊が有力です。賃貸とは異なり、日単位で貸し出せるため、部屋の稼働率を高めやすいのがポイントです。
  3. 地域の活性化につながる
    ゲストに地元の魅力を体験してもらうことで、周辺地域への経済効果が期待できます。飲食店や観光施設との連携が生まれやすく、コミュニティ全体が盛り上がるケースも少なくありません。

賃貸ではなく民泊を選ぶ理由

物件オーナーが空き部屋や空き家を活用する際、長期契約の賃貸にするか、短期貸しの民泊にするかは大きな選択肢です。両者の違いを比較すると、以下のようなメリットから民泊を選ぶ方が増えています。

  1. 契約期間の柔軟性
    賃貸は年単位や月単位の契約が多いですが、民泊なら最短1日から貸し出せます。予約状況や個人の予定に応じて柔軟に日数を設定できるため、ライフスタイルに合わせた運営が可能です。
  2. 料金設定の自由度が高い
    需要の高いシーズンや週末に料金を上げるなど、収益を最大化する工夫がしやすいのが民泊の特徴です。長期契約の賃貸では家賃を短期間で大幅に変えることは難しいため、運営次第で賃貸よりも高い収入が得られる可能性があります。
  3. 手軽に始めやすい
    一般的な賃貸経営に比べると、民泊は数日単位で空室を埋められるため、長期入居者を探す必要がありません。初期投資やリフォーム費用を抑えて始められることも、民泊の強みのひとつです。

まとめ:民泊を始める際のポイント

本記事では、民泊が注目される背景とメリット、賃貸との比較をご紹介しました。実際に民泊の始め方を検討する際は、住宅宿泊事業法(民泊新法)や自治体の条例、消防設備などの法的要件をしっかり把握することが大切です。また、周辺住民とのコミュニケーションやトラブル対策なども欠かせません。

  • 法令・条例の確認:営業日数や設備要件、消防法令適合など
  • 物件オーナーや管理組合への事前相談:賃貸契約・管理規約における民泊利用の可否
  • 周辺住民への事前周知:安心・安全な運営のための地域コミュニケーション
  • 住宅宿泊管理事業者の活用:トラブル対応や清掃管理など、プロへの委託による負担軽減

法律や専門的な手続きに不安がある方は、実績のある行政書士など専門家に相談しながら進めると、スムーズかつ確実に開業準備を整えられるでしょう。

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