産休・育休時の手続き一覧と注意点【中小企業向け】

中小企業向け|産休・育休時の手続き一覧と注意点

初めて従業員が産休や育休を取得することになり、何をどう進めればよいのか迷っていませんか? 特に中小企業では、人事や総務の担当者が限られているため、産休・育休時の手続きが思った以上に複雑で、時間がかかることも少なくありません。

従業員が安心して産休・育休を取得できる環境を整えることは、企業が法的義務を果たすだけでなく、企業の成長にも繋がります。産休・育休制度を活用することで、従業員の定着率向上や企業イメージの向上も期待できるのです。

しかし、必要な手続きや申請書類は多岐にわたり、少しのミスが従業員や会社に不利益をもたらす可能性もあります。その複雑さに「どこから手を付ければいいのかわからない」と感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、産休・育休時の手続きを初めて行う中小企業の経営者や担当者の方に向けて、必要な手続きの全体像と注意点をわかりやすく解説します。これを参考に、スムーズに手続きを進めていただければ幸いです。

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目次

産休・育休の手続きの流れ

産休・育休に関する手続きは、法律で定められた重要な業務です。手続きの流れを把握し、必要な対応を漏れなく行うことが求められます。本セクションでは、主な手続きの全体像を整理しました。必要なタイミングや具体的な手続き内容を把握し、スムーズな対応を目指しましょう。

産休の流れ

産休に関する手続きは、主に以下の3つのステップに分けられます。

①出産前の手続き

  • 妊娠の報告
    従業員から妊娠報告を受けた場合、「産前休業」「育児休業」の取得意向を確認します。また、産休・育休制度(給付金含む)について、従業員に周知する必要があります。
  • 産休取得の申し出
    従業員が産休取得を希望する場合、所定の産休申請書に必要事項を記載のうえ提出してもらいます。社内様式がない場合は、『出産予定日』や『最終出社予定日』などの必要情報を確認しましょう。
  • 社内調整
    従業員の業務を引き継ぐ担当者や代替要員の手配など、社内の調整をおこないます。
  • 給与計算時における社会保険料引き落とし停止の手続き
    社会保険料免除の適用時期を確認し、給与計算時に適切に対応できるよう調整します。処理が漏れると、余分な保険料を控除してしまう可能性があるため注意が必要です。
  • 休業中の通勤手当や定期券の調整方法
    休業期間中の通勤手当を実費精算としたり、休業日数に応じて減額したりするなど、就業規則や賃金規定に基づいて対応を検討します。支給済みの通勤定期券については、就業規則に従い返金の対応を行います。
  • 住民税の支払方法について
    休業中は給与支払いがないため、給与天引きでの住民税徴収ができません。休業前に従業員と相談し、『普通徴収』『一括徴収』『会社の立て替え』など適切な方法を選択します。

【参考情報】
出産予定日から産前産後休業期間を計算できます。詳しくは以下のサイトをご参照ください。
・厚生労働省委託 働く女性の心とからだの応援サイト 「産前・産後休業、育児休業の自動計算」 https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/leave/

②産休開始後の手続き

  • 社会保険の手続き
    「産前産後休業取得者申出書」を管轄の年金事務所または事務センターに提出します。対象期間において、従業員と企業双方の社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されます。

③出産後の手続き

  • 出産一時金の手続き
    「出産育児一時金支給申請書」を健康保険組合に提出します。出産関連の経済負担を軽減するための給付金です。
  • 出産手当金の手続き
    「出産手当金支給申請書」を健康保険組合に提出します。出産のために会社を休み、給与が支払われない場合に支給される給付金です。
  • 予定日と異なる出産日の対応
    従業員が予定日と異なる日に出産した場合、「産前産後休業取得者変更届」を管轄の年金事務所または事務センターに提出します。
  • 扶養者の登録
    従業員が子どもを扶養する場合、「被扶養者(異動)届」を管轄の年金事務所または事務センターに提出します。

【参考情報】
以下の情報を参考に、正確に手続きを進めてください。

育休の流れ

育休に関する手続きは、主に以下の3つのステップに分けられます。

①育休前の手続き

  • 育休取得の申し出
    従業員から育休の希望があった場合、法令や社内規定に基づき取得対象者か否かを確認します。対象者であれば、休業開始予定日の1か月前までに「育児休業申出書」を提出してもらいましょう。

②育休開始後の手続き

  • 社会保険の手続き
    「育児休業等取得者申出書」を管轄の年金事務所または事務センターに提出します。対象期間において、従業員と企業双方の社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されます。
  • 育児休業給付金の手続き
    「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書」をハローワークに提出します。「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」も併せて提出します。
  • 出生後休業支援給付金の手続き
    2025年4月から「出生後休業支援給付金」が創設されます。子の出生直後の一定期間に、両親がともに育児休業を取得した場合に支給されます。

出生後休業支援給付金の支給申請は、原則として、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給申請と併せて、同一の支給申請書を用いておこないます。「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書」をハローワークに提出します。

③育休中の手続き

  • 育児休業給付金の手続き
    初回申請後、次回分の申請書がハローワークから交付されます。原則2カ月に1回、ハローワークが交付する「育児休業給付次回支給申請日指定通知書」に印字されている申請期間内に手続きをおこないましょう。

【参考情報】

以下の情報を参考に、正確に手続きを進めてください。

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育休明けの手続きの流れ

育休を終え従業員がスムーズに職場復帰できるよう、必要な手続きを適切に進めることが重要です。

  • 復職日の確認
    育休復帰の1〜2か月前に、従業員と面談をおこない、復職日や就労条件、担当業務について話し合いましょう。面談時には、「育児休業復職前面談シート」(任意書式)を活用し、『復帰日』『勤務時間の希望』『配慮が必要な点』などを確認しましょう。
  • 社内調整
    面談の結果決まった就労条件などを、人事担当者や復帰先の部署に周知します。スムーズな復職のために、業務内容やスケジュールの調整も行いましょう。
  • 社会保険の手続き
    育休終了予定日前に育休を終了する場合、「育児休業等終了届」を管轄の年金事務所または事務センターに提出します。
  • 社会保険料の天引き再開
    育休中に免除されていた社会保険料が復帰後から再開されるため、給与計算を適切に行い、天引き設定を復元します。
  • 住民税の天引き再開
    給与天引きで住民税を徴収する場合、特別徴収に切り替える手続きが必要です。納税先の市区町村に手続き方法を確認して進めましょう。
  • 通勤手当の支払い再開
    就業規則や賃金規定に基づいて通勤手当を計算し、支給を再開します。

【参考情報】

育休延長を望んだ場合の流れ

従業員が育休期間の延長を希望する場合は、適切な対応と手続きを進める必要があります。

  • 延長申請の受理
    従業員から育休延長の理由を説明してもらいます。2025年4月からは、育児休業給付金の延長申請に以下の書類が必要となるため、従業員に提出を依頼しましょう
    • 「育児休業給付金支給対象期間 延長事由認定申告書」
    • 「市区町村等に保育園所等の利用申し込みを行ったときの申込書の写し」
  • 延長期間の確認
    法律で定められた延長可能期間を確認したうえで、延長の可否を従業員に通知します。
  • 社会保険・雇用保険の手続き
    延長期間に応じて以下の手続きを進めます。
    • 社会保険料免除の申請(「育児休業等取得者申出書(延長)」)
    • 育児休業給付金の延長申請

【参考情報】
以下の情報を参考に、正確に手続きを進めてください。

男性社員の育休手続き

2022年4月の法改正により、「出生時育児休業(産後パパ育休)」が導入され、男性社員も育休を取得しやすい環境が整備されています。ここでは、男性社員が育休を取得する際の手続きと社内での調整ポイントについて解説します。

産後パパ育休を取得する場合

産後パパ育休は、出産後8週間以内に最大4週間まで取得できる育休制度です。取得の流れは以下の通りです。

  • 申請書の提出
    取得予定日の2週間前までに、「出生時育児休業取得申出書」(社内様式など)を従業員から提出してもらいます。
  • 社内調整
    勤務の引き継ぎやスケジュール調整を行い、業務への影響を最小限に抑える準備をします。
  • 申請手続き
    • 社会保険料免除の申請
      「育児休業等取得者申出書」を年金事務所または事務センターに提出
    • 出生時育休給付金の申請
      「育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書」「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」をハローワークに提出

育児休業を取得する場合

男性社員が通常の育児休業を取得する場合、女性社員と同様の手続きが必要です。

  • 事前の申請
    育休開始の1か月前までに、「育児休業申出書」を提出してもらいます。
  • 育児休業給付金の申請
    「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書」をハローワークに提出します。
  • 社会保険料免除の申請
    育児休業等取得者申出書」を年金事務所または事務センターに提出します。

パパ・ママ育休プラスを取得する場合

「パパ・ママ育休プラス」は、夫婦がともに育児休業を取得する際に、最長1年2か月まで延長可能な制度です。従業員からの申し出に基づき、以下の書類をハローワークに提出します。

  • 育児休業給付金支給申請書の該当欄への記載。
  • 続柄が記載された世帯全員の住民票(写し)
  • 配偶者の育児休業の取得を確認できる書類

男性社員が育休を取得する場合の社内調整

男性社員が育休を取得する際、以下の社内調整が重要です。

  • 勤務調整
    業務の引き継ぎを計画的に進め、チーム内で役割分担を見直します。
  • 休業中の連絡体制
    緊急時の連絡先を明確にし、必要に応じた在宅勤務のルールを事前に決定しましょう。また、休業中の就労に関するルールも整備します。
  • 復帰後のフォロー
    スムーズな業務再開を支援するため、復帰時の研修や相談窓口を設置するなどの取り組みを行います。

【参考情報】

以下の情報を参考に、正確に手続きを進めてください。

産休・育休手続きを進める際の留意事項

産休・育休手続きは法律に基づく重要な業務ですが、進める際には以下の点に注意が必要です。

法改正に対応できているか確認する

産休・育休に関連する法律や制度は、時代のニーズに応じて頻繁に改正されます。最新情報を見落とすと、誤った手続きをおこなうリスクがあるため、厚生労働省の発表や専門家の情報を活用して、常に最新の情報を把握しておきましょう。

手続きのタイミングを守る

各手続きには法的な期限が設けられています。例えば、産前休業の申請や育休取得の申し出には事前の通知が必要です。また、行政へ提出する書類についても、期限を過ぎると従業員が不利益を被る可能性があります。スケジュール管理を徹底し、必要な手続きが適切なタイミングで進められるようにしましょう。

従業員とのコミュニケーション不足を防ぐ

産休・育休を取得する従業員が抱える不安や疑問に寄り添い、適切に説明することが大切です。企業内に相談窓口を設置し、従業員が休業取得を検討した際に気軽に相談できる体制を整えましょう。また、手続きの流れや必要な書類について事前に説明し、スムーズに対応できる環境を整えることも重要です。

社内規定の整備を確認する

企業ごとに産休・育休に関する運用ルールが異なる場合があります。就業規則や労働契約書の内容を確認し、それらを従業員に明確に伝えることでトラブルを未然に防ぎます。また、必要に応じて社内規定を最新の法律に合わせて改訂することも忘れないようにしましょう。

業務分担の準備をする

産休・育休中の従業員が担当していた業務をどのように分担するか、事前に計画を立てることが重要です。業務が滞らないよう、引き継ぎ内容をリスト化し、周囲の社員に負担が集中しないよう配慮しましょう。事前に業務分担を調整することで、職場全体の負担を軽減できます。

男性社員の育休対応を整える

近年、男性社員の育休取得が推奨されていますが、周囲の理解不足や社内制度の不備が課題となることがあります。社内で育休制度を周知し、柔軟な対応を行うことで、男性社員も育休を取得しやすい職場環境を作りましょう。これにより、職場全体で育児をサポートする文化が促進されます。

まとめ

近年、男性社員の育休取得が推奨されていますが、周囲の理解不足や社内制度の不備が課題となることがあります。社内で育休制度を周知し、柔軟な対応を行うことで、男性社員も育休を取得しやすい職場環境を作りましょう。これにより、職場全体で育児をサポートする文化が促進されます。

  • 産休・育休の手続きの流れ
    基本的なステップを理解することで、漏れのない対応が可能です。
  • 育休明けの手続き
    従業員がスムーズに職場復帰できるよう、サポート体制を整えることが重要です。
  • 育休延長の対応
    個々の状況に応じた柔軟な対応が、企業への信頼感を高めます。
  • 男性社員の育休手続き
    法改正により導入された新制度に対応するための社内調整が重要です。

手続きを進める際には、以下の点に注意しましょう

  • 法改正への対応
    法律や制度は頻繁に改正されるため、最新情報を常に確認する必要があります。
  • 会社内規程の確認
    各企業の就業規則や規定に従って対応することが不可欠です。
  • 専門家への相談
    手続きに関する疑問点や業務負担がある場合は、専門家である社労士に相談することをおすすめします。確実かつ効率的な手続き対応が期待できるだけでなく、法改正にも柔軟に対応できます。

これらの手続きは複雑に感じることもありますが、計画的かつ着実に進めることで、スムーズな対応が可能です。さらに、男性社員の育休取得促進や、復帰後のフォロー体制を整えることで、従業員満足度の向上や企業イメージの向上にも寄与します。

産休・育休制度をしっかりと運用することで、従業員が安心して働ける職場環境を実現し、企業全体の成長につなげていきましょう。

 厚生労働省のHPに、妊娠期から復職後までの支援と手続きフローがわかりやすく掲載されています。ぜひ、参考にしてみてください。参考:厚生労働省HP 育休復帰支援プラン策定のご案内「妊娠期から復職後までの支援・手続きフロー」 000904523.pptx

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