男性従業員の育児休業取得を推進するための『出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)』をご存じでしょうか?
少子化が進み、働き方改革が求められる中、男性の育児休業取得率を向上させることは、企業にとっても重要な課題です。しかし、支援体制の整備不足や文化的なハードルが原因で、育児休業の取得が進まない企業も少なくありません。
こうした課題の解決に役立つのが『出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)』です。この助成金を活用することで、企業は男性従業員の育児休業取得を支援し、働きやすい職場環境の構築を目指すことができます。
そこで今回は、この助成金制度の詳細や申請の流れ、さらに活用することで得られるメリットについて詳しく解説していきます。
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出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)とは
『出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)』は、男性従業員の育児休業取得を促進するために設けられた助成金制度です。
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)は、男性従業員に育児休業を取得させた際に受給できる「第1種」と、第1種受給後に男性従業員の育児休業取得率が一定水準を超えた場合に支給される「第2種」に分かれています。
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の目的は、企業が男性従業員の育児休業を取得しやすい環境を整備することで、従業員のワークライフバランスを向上させ、育児に専念できる職場環境を整えることにあります。また、育児休業取得を企業文化として根付かせることで、従業員満足度や職場全体の生産性向上も目指しています。
助成金の申請要件と支給額の解説
『出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)』を利用するためには、いくつかの申請要件を満たす必要があります。このセクションでは、助成金の申請要件、支給額について詳しく解説します。
申請要件と支給額の概要
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の対象となるのは、男性従業員が育児休業を取得しやすい環境づくりに積極的に取り組む中小企業です。具体的には以下の条件を満たす必要があります。
参照:厚生労働省HP 事業主の方への給付金のご案内 「両立支援等助成金」『2024年度の両立支援等助成金の概要』
育児・介護休業法等に定める「雇用環境整備の措置」とは?
第1種、第2種ともに必須となる「雇用環境整備の措置」とは、以下の5つの取り組みを指します。
- 育児休業に関する従業員向け研修の実施
- 育児休業に関する相談体制の整備(相談窓口の設置)
- 従業員の育児休業の取得事例を収集し、従業員に提供すること
- 育児休業制度や取得促進方針の周知
- 育児休業申出をした従業員が育児休業を円滑に取得できるよう、業務配分や人員配置の調整を行うこと
これらの措置は第1種と第2種共通ですが、第2種の申請時には追加要件が課されることがあります。具体的な内容については、『両立支援等助成金支給申請の手引き パンフレット(2024年度)』を参照してください。
参考;厚生労働省HP 事業主の方への給付金のご案内 「両立支援等助成金」『両立支援等助成金支給申請の手引き パンフレット(2024年度)』
育児休業中の業務カバーのための規定について
第1種、第2種ともに申請要件となる「業務体制の整備」には、以下の2点を含む規定を策定する必要があります。
- 育児休業取得者の業務を整理し、引き継ぎを行うこと
- ①により引き継ぎ対象となった業務について、見直しを検討し、検討のうえ必要に応じて対応策を実施すること
これらの内容を、就業規則や労使協定に明文化したり、育休復帰支援プランを作成したりする必要があります。
また、これらの規定策定は、対象となる男性従業員の育児休業開始日前日までに行うことが必須です。体制の整備について育児休業開始日前日までに行うことが不可能である場合、遅くとも育児休業終了日までには完了していることが求められます。
就業規則への規定例や育休復帰支援プランで定める場合の例は、『両立支援等助成金支給申請の手引き パンフレット(2024年度)』を参照してください。
規定の策定や届出業務には、労務の専門家である社労士のサポートを受けることをおすすめします。就業規則の作成や行政への届出は、社労士が行える独占業務であり、法的トラブルの防止にも役立ちます。
参考;厚生労働省HP 事業主の方への給付金のご案内 「両立支援等助成金」『両立支援等助成金支給申請の手引き パンフレット(2024年度)』
育児休業等の情報公表による助成金加算について
第1種助成金(1人目〜3人目のいずれか)を申請する際に、自社の育児休業の利用状況に関する情報を厚生労働省の指定サイトに公表することで、助成金に加算が適用されます。
公表が必要な情報
以下の3つの項目を公表する必要があります。
- 男性従業員の育児休業等取得割合
- 女性従業員の育児休業取得割合
- 従業員(男女別)の育児休業平均取得日数
公表方法と注意事項
申請前の直近年度の情報を、厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」内の「一般事業主行動計画公表サイト」に掲載することが必要です。自社サイトやその他の指定外の場所で公表した場合、加算の対象外となります。
また、計算方法やサイトへの記載例については、『両立支援等助成金支給申請の手引き パンフレット(2024年度)』を参考にしてください。
参考;厚生労働省HP 事業主の方への給付金のご案内 「両立支援等助成金」『両立支援等助成金支給申請の手引き パンフレット(2024年度)』
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出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)の申請方法と必要な手続き
第1種および第2種助成金を受け取るためには、それぞれの申請期限や必要書類を正確に把握し、適切な手続きを進めることが重要です。このセクションでは、第1種・第2種ごとの申請方法と手続きについて詳しく解説します。
第1種の申請方法
申請期限
申請に係る育児休業終了日の翌日から2か月以内に申請する必要があります。
なお、育児休業(産後パパ育休含む)を複数回に分けて取得した場合も、最初の育児休業が終了した翌日から申請期限が始まります。全ての休業が終了した後ではありませんので、ご注意ください。
必要書類
- 支給申請書(所定の様式)
- 支給要件確認申立書(所定の様式)
- 労働協約または就業規則、関連する労使協定
- 雇用環境整備を複数実施したこと、実施日を証明する書類
- 育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しにかかる規定等
- 対象の男性従業員の育児休業申出書
- 対象の男性従業員の育児休業前1か月分の就業実績及び休業期間中の休業したことが確認できる書類(出勤簿、タイムカード、賃金台帳など)
- 対象の男性従業員の雇用契約期間、育休期間の所定労働時間、所定労働日または所定労働日数が確認できる書類(労働条件通知書、企業カレンダー、勤務シフト表など)
- 母子手帳(子の出生を証明する部分)、子の健康保険証、住民票 など
- 次世代法に基づく一般事業主行動計画策定届(なお、プラチナくるみん認定を受けている事業主は提出不要)
- 育児休業等に関する情報公表加算の支給申請書
- 一般事業主行動計画公表サイトの企業情報の公表画面等
- 提出を省略する書類についての確認書
- 支払方法・受取人住所届及び支払口座が確認できる通帳等の写し
※2人目3人目の申請の際、内容に変更がなければ上記③④⑤および⑩の提出を省略できます。
手続きの流れ
- 必要書類を準備し、内容を確認します。
- 支給申請書に必要事項を記入します。
- 労働局の雇用環境・均等部宛てに書類を提出します。郵送の場合は、簡易書留など配達記録が残る方法を使用し、消印有効ではなく期限内に到着するよう送付してください。
第2種の申請方法
申請期限
育児休業取得率の上昇要件を満たした事業年度の翌事業年度の開始日から6か月以内に申請を行う必要があります。
必要書類
- 支給申請書(所定の様式)
- 支給要件確認申立書(所定の様式)
- 労働協約または就業規則、関連する労使協定
- 雇用環境整備を複数実施したこと、実施日を証明する書類
- 育児休業取得者の業務を代替する労働者の業務見直しにかかる規定等
- 男性従業員の育児休業取得率が上昇等したことが分かる書類
- 対象の男性従業員の育休申出書および休業期間中の休業したことが確認できる書類(出勤簿、タイムカード、賃金台帳など)
- 次世代法に基づく一般事業主行動計画策定届(なお、プラチナくるみん認定を受けている事業主は提出不要)
- 提出を省略する書類についての確認書
※申請の際、内容に変更がなければ上記③④⑤および⑧の提出を省略できます。
手続きの流れ
- 必要書類を準備し、内容を確認します。
- 支給申請書に必要事項を記入します。
- 労働局の雇用環境・均等部宛てに書類を提出します。郵送の場合は、簡易書留など配達記録が残る方法を使用し、消印有効ではなく期限内に到着するよう送付してください。
申請における注意点
- 提出期限を過ぎた場合は助成金が受給できないため、早めの準備を心がけましょう。
- 一般事業主行動計画は、申請時点において計画期間が有効であるかの確認を必ず行いましょう。一般事業主行動計画についての詳細は、厚生労働省HP 「一般事業主行動計画の策定・届出等について」を参照ください。
- 支給申請書の記載方法については、『両立支援等助成金支給申請の手引き パンフレット(2024年度)』を参考にしてください。
- 記載ミスや書類不備を防ぐため、事前に社労士などの専門家に相談することをお勧めします。社労士は、助成金や補助金に関する豊富な知識と経験を持ち、申請手続きをサポートまたは申請代行することができます。申請から受給までには多くの時間と労力を要する助成金の申請を、スムーズに行うことができ、受給率を高めることが可能です。
参照:厚生労働省HP 「一般事業主行動計画の策定・届出等について」
参考;厚生労働省HP 事業主の方への給付金のご案内 「両立支援等助成金」『両立支援等助成金支給申請の手引き パンフレット(2024年度)』
まとめ
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)は、男性従業員の育児休業取得を促進し、育児と仕事の両立を支援するために設けられた助成金制度です。企業にとっては、従業員の働きやすい環境を整備するだけでなく、助成金を活用することで、コスト負担を軽減し、従業員の定着率向上や企業イメージアップを図ることができるというメリットがあります。今後、出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)がより多くの企業に利用され、男性の育児参画がさらに進展することが期待されます。
一方で、申請には細かな要件や準備が必要であり、特に初めて利用する企業にとっては複雑に感じる部分もあるでしょう。そのため、早めの情報収集や、専門家である社労士のサポートを受けることで、手続きを円滑に進めることをおすすめします。
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)を活用することで、育児を支援する企業姿勢をアピールし、従業員の満足度や採用力の向上にもつなげることが可能です。企業としてこの制度をうまく取り入れ、働きやすい職場環境づくりを推進していきましょう。
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