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海外派遣者の労災保険特別加入手続き方法を解説
日本国内の事業所で働く従業員が海外の事業所に出向する場合(※1)、労災保険の手続きはどのようになるのでしょうか。
労災保険は、原則国内の事業所のみで適用されるため、海外の事業所に出向する従業員は、業務災害等の給付が受けられません。このような業務災害等に備えて必要なのが、労災保険特別加入(海外派遣者)の手続きです。
必要な手続きを行うことで、国内の事業所から海外の事業所に出向する従業員の業務上の災害等に備えることができます。
労災保険の給付については、国内事業所で働く従業員と同様、業務上または通勤途中の災害について給付を受けることができます。今回は、労災保険特別加入(海外派遣者)について、必要な手続きと注意点を説明していきます。
(※1)海外出張・海外派遣の違い
「海外出張」
国内の事業場に所属して、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する労働者の事です。(海外で労働しているが、指揮命令権は国内の事業所である)
→国内の事業所で労災保険が適用されます。
「海外派遣」
海外の事業場に所属して、その事業場の使用者の指揮に従って勤務する労働者またはその事業場の使用者の事です。
→労災保険特別加入(海外派遣者)の手続きを行うことで、海外の事業所で労災保険を適用することができます。
「海外出張」と「海外派遣」のどちらになるかは勤務の実態に応じて総合的に判断されます。
参考:海外派遣と海外出張の区別
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040324-7-05.pdf
労災保険特別加入(海外派遣者)ができる対象者の範囲
日本国内の事業から海外の事業所に派遣される労働者
※日本国内の事業とは、日本国内で労働保険が適用されている事業の事業主です。
※海外の事業所とは、海外支店や現地法人などを言います。
日本国内の事業所から海外の中小規模の事業所(※2)に、労働者ではない立場で派遣される事業主等(※3)
業種 | 労働者数 |
金融業、保険業、不動産業、小売業 | 50人以下 |
卸売業、サービス業 | 100人以下 |
上記以外の業種 | 300人以下 |
引用元:特別加入制度のしおり(海外派遣者用)「1 特別加入者の範囲」(2023.06.12)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040324-7-03.pdf
開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人
(※2)中小規模の事業所とは、海外の国ごとの事業所の規模が以下表の業種ごとの労働者数
を基準とします。
(※3)国内の事業所では原則事業主等の労働者の立場でない従業員は、労災保険に加入できません。
しかし、労災保険特別加入(海外派遣者)の場合は、中小規模の事業所に限り代表者なども労災保険に加入することができます。
労災保険特別加入(海外派遣者)に必要な手続き
日本国内の事業所の従業員を海外の事業所に初めて派遣する場合
提出書類 | 特別加入申請書(海外派遣者) |
提出先 | 所轄の労働基準監督署長を経由して、労働局長 |
特別加入予定者の派遣先での下記内容を記載する必要があります。
- 業務内容
- 地位・役職
- 派遣先の労働者の人数および就業時間
- 希望する給付基礎日額(※4)
特別加入予定者が海外の中小規模の事業所に派遣される事業主等の場合は、上記①~④に加え、追加で「5. 派遣先の事業の種類」を記載する必要があります。
なお、国内の事業所から海外の中小規模事業所の事業主等として派遣される場合は、上記③の添付書類として、事業規模を証明する書類(会社案内等)の添付が必要となります。
書類は、所轄の労働基準監督署長を経由して、労働局長へ提出しましょう。
(※4)給付基礎日額とは、労災保険の給付額を受ける際の基礎となるもので、各対象者について任意で設定ができ、申請に基づいて、労働局長が決定します。
労働保険料年度更新の際に納付する労働保険料については、給付基礎日額に365日を乗じた保険料算定基礎額に労働保険料率3/1000を乗じることにより、算出します。
日本国内の事業所から海外の事業所にすでに従業員を派遣している場合
提出書類 | 特別加入申請書(海外派遣者) |
提出先 | 所轄の労働基準監督署長を経由して、労働局長 |
なお、下記の場合は、特別加入に関する変更届の提出が必要です。
- 海外の事業所に派遣されている従業員の氏名や、業務内容が変更になった場合
- 海外の事業所の名称や所在地が変更になった場合
- すでに海外派遣している従業員の派遣先の国が変更になった場合
- 海外の事業所に派遣されている労働者が海外の中小規模の事業所の事業主等になった場合
- 海外の中小規模の事業所に派遣されている事業主等が労働者になった場合
- 日本国内の事業所から新たに海外の事業所に派遣する従業員が追加となった場合
- 海外の事業所に派遣されている従業員の業務が終了し、日本国内の事業所に帰任する場合
④の場合は、派遣先の事業の種類、派遣先の労働者の人数および就業時間を記載する必要があり、申請の際に事業規模を証明する書類(会社案内等)の添付が必要となります。
労働局長の承認がおりるのは、申請日の翌日から30日以内で申請者が加入を希望する日付となります。加入希望日以降に提出した場合、加入希望日での加入ができないため、加入希望日の前日までに申請する必要があります。出国日から従業員が労災保険特別加入できるよう、出国日までにお手続きを行いましょう。
また、帰任の際の手続きは、赴任の際の手続きより手続き漏れが発生する頻度が高くなっています。
帰任の際の手続きが漏れており、遡って手続きを行う際には、特別加入に関する変更届(海外派遣者)に加え、帰任の事実がわかるパスポートの写しや海外派遣についての辞令等の添付が必要となりますので、ご注意ください。