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2025年施行|育児介護休業法の改正ポイント
2024年5月31日、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律」が公布されました。この改正は、仕事と育児・介護の両立支援をさらに強化することを目的としており、主に2025年4月1日から施行される予定です。
本記事では、2025年に施行される育児介護休業法の改正ポイントについて、企業の経営者や人事担当者の方々に向けて、詳しく解説していきます。
育児介護休業法改正の背景と目的
近年、少子高齢化が進む日本社会において、仕事と育児・介護の両立支援は喫緊の課題となっています。政府は、この課題に対応するため、育児介護休業法を改正し、より柔軟な働き方を可能にする環境整備を進めています。
2025年施行の改正は、これまでの取り組みをさらに推し進め、働く人々が育児や介護と仕事を両立しやすい社会の実現を目指しています。具体的には、以下のような目的があります。
- 子育て世代の就労支援
- 介護離職の防止
- 多様な働き方の促進
- 男性の育児参加の促進
- 企業の両立支援体制の強化
これらの目的を達成することで、労働力の確保と生産性の向上、さらには少子化対策にもつながることが期待されています。
主な改正ポイント
子の看護休暇の拡充
現行の子の看護休暇制度は、子どもの病気やけがの際に利用できる休暇でしたが、改正後は以下のように拡充されます。
- 名称が「子の看護等休暇」に変更
- 取得理由の拡大:感染症に伴う学級閉鎖等や子の行事参加も対象に
- 対象年齢の引き上げ:小学校3年生修了まで(現行は小学校就学前まで)
- 勤続6か月未満の労働者を労使協定で対象外とする仕組みの廃止
この改正により、子育て中の従業員がより柔軟に休暇を取得できるようになります。ただ、看護等休暇の対象となる”学校行事”は、入園、卒園又は入学の式典など重要な式典のみを指し、運動会や遊戯会、発表会などはこれに含まれないことに注意が必要です。
企業は、新しい制度に対応した就業規則の改定や、従業員への周知が必要になります。また、休暇取得の増加に備えて、業務のカバー体制を整備することも重要です。
介護休暇の取得要件緩和
介護休暇についても、取得要件が緩和されます。具体的には、勤続6か月未満の労働者を、介護休暇を取得できない労働者として労使協定で定めることができなくなります。
これにより、より多くの従業員が介護休暇を利用できるようになります。特に、中途採用者や契約社員など、比較的勤続年数の短い従業員も、入社後すぐに介護休暇を取得できるようになります。
育児のための所定外労働の制限拡大
現行法では、3歳未満の子を養育する労働者に対して所定外労働(残業)の制限を認めていますが、改正後はこの対象が「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」に拡大されます。
これにより、小学校入学前の子どもを持つ従業員も、所定労働時間を超えて働くことを免除されることになります。この改正は、子育て中の従業員の負担軽減と、仕事と育児の両立支援に大きく寄与すると考えられます。
3歳から小学校就学前の子を養育する労働者への措置
改正法では、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に対して、以下の措置のうち2つ以上を講じることが企業に義務付けられます。
- 始業時刻等の変更
- テレワーク等(10日/月・時間単位)
- 短時間勤務制度
- 新たな休暇の付与(10日/年・時間単位)
- 保育施設の設置運営等
これらの措置により、子育て中の従業員がより働きやすい環境が整備されることが期待されます。企業は、自社の状況や従業員のニーズを踏まえて、適切な措置を選択し導入する必要があります。
また、子が3歳になるまでの適切な時期に、当該措置の個別の周知・意向確認をすることが義務付けられます。
仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮義務
妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付けました。事業主は、労働者から聴取した意向の内容を理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。
育児休業取得状況の公表義務の対象拡大
現在、常時雇用する労働者が1,000人を超える企業に課されている育児休業取得状況の公表義務が、300人を超える企業にまで拡大されます。
公表内容は、男性労働者の育児休業等の取得割合、または育児休業等と育児目的休暇の取得割合のいずれかとなります。
次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定時の新たな義務
常時雇用する労働者数100人超の企業等(一般事業主)は、一般事業主行動計画策定時に次のことが義務付けられます。
- 計画策定時の育児休業取得状況や労働時間の状況把握等(PDCAサイクルの実施)
- 育児休業取得状況や労働時間の状況に関する数値目標の設定
次世代育成支援対策推進法の有効期限延長
次世代育成支援対策推進法の有効期限が2035年3月31日まで、10年間延長されました。
改正育児介護休業法の具体的な施行時期
改正育児介護休業法は、基本的に2025年4月1日から施行されます。
ただし、育児のための所定外労働の制限拡大や3歳から小学校就学前の子を養育する労働者への措置、仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮義務については、公布(2024年5月31日)後1年6か月以内の政令で定める日が施行日となっています。
また、次世代育成支援対策推進法の有効期限延長については、公布日(2024年5月31日)から既に施行されています。
自社が今後どのようなスケジュールで育児介護休業法の改正に対応していくべきか、施行日をよく確認するようにしましょう。
企業に求められる対応
2025年の育児介護休業法改正に向けて、企業は以下のような対応を検討する必要があります。
- 就業規則の見直し
改正内容に合わせて、子の看護等休暇、介護休暇、所定外労働の制限などに関する規定を更新します。 - 従業員への周知
新しい制度や拡充された制度について、従業員に分かりやすく説明し、理解を促進します。 - 管理職への研修
制度の変更点や、部下からの休業申請への対応方法などについて、管理職向けの研修を実施します。 - 業務体制の見直し
休業取得者の増加や柔軟な働き方の導入に備え、業務分担や人員配置を再検討します。 - 相談窓口の設置
育児や介護に関する従業員からの相談に対応できる窓口を設置し、適切なサポート体制を整えます。 - 制度利用の促進
対象となる従業員に積極的に制度の利用を呼びかけ、両立支援の取り組みを推進します。 - 取得状況の把握と分析
育児休業や介護休業の取得状況を定期的に把握し、必要に応じて改善策を検討します。 - 公表準備
育児休業取得状況の公表義務対象となる企業は、適切な公表方法を検討し、準備を進めます。 - 一般事業主行動計画の見直し
次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の策定・変更時に、新たな義務に対応した内容を盛り込みます。
まとめ
2025年に施行される育児介護休業法の改正は、仕事と育児・介護の両立支援をさらに強化するものです。子の看護等休暇の拡充、介護休暇の取得要件緩和、所定外労働の制限拡大など、様々な面で従業員の働きやすさが向上することが期待されます。
一方で、企業には新たな対応が求められることになります。就業規則の改定、従業員への周知、業務体制の見直しなど、準備すべき事項は多岐にわたります。
2025年の施行に向けて、計画的に準備を進めることが重要です。本改正を機に、従業員が安心して働ける職場環境づくりに取り組むことで、企業の競争力向上にもつながるでしょう。
育児介護休業法の改正に関する詳細な情報や具体的な対応方法については、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。社会保険労務士や労務コンサルタントなどの専門家に相談し、自社に最適な対応策を検討していくことが大切です。
2025年の改正を、より良い職場環境づくりの機会として活用し、従業員と企業がともに成長できる組織を目指しましょう。