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令和6年の賃金引上げ実施企業が過去最高水準に
10月28日、厚生労働省が令和6年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果を公表しました。本調査は、全国の常用労働者100人以上を雇用する民営企業3,622社を対象に実施され、1,783社から有効回答を得たものです。
(参考 厚生労働省HP「賃金引上げ等の実態に関する調査:結果の概要」:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/24/index.html」)
賃金引上げ実施企業が過去最高水準に
令和6年における賃金引上げの実施状況を見ると、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」と回答した企業の割合は91.2%となり、前年の89.1%をさらに上回る結果となりました。
企業規模別に見ても、すべての規模で9割を超える企業が賃金引上げを実施・予定しており、特に5,000人以上の大企業では99.1%と、ほぼすべての企業が賃金引上げに取り組んでいます。
改定額・改定率ともに大幅な上昇
具体的な改定状況を見ると、1人平均賃金の改定額は11,961円(前年9,437円)、改定率は4.1%(前年3.2%)と、金額・率ともに前年を大きく上回る結果となりました。特筆すべきは、企業規模に関係なく、すべての規模で改定額・改定率が前年を上回っていることです。
労働組合の有無による差が顕著に
興味深いのは、労働組合の有無による差です。労働組合がある企業では、1人平均賃金の改定額が13,668円(改定率4.5%)であるのに対し、労働組合がない企業では10,170円(改定率3.6%)となっています。
この結果は、労働組合の賃金交渉における影響力を示す一つの指標と言えるでしょう。
定期昇給とベースアップの動向
定期昇給(定昇)の実施状況を見ると、管理職では76.8%(前年71.8%)、一般職では83.4%(前年79.5%)の企業が「行った・行う」と回答しています。また、ベースアップについては、管理職で47.0%(前年43.4%)、一般職で52.1%(前年49.5%)の企業が実施しており、いずれも前年を上回る結果となっています。
賃金改定の判断要素
企業が賃金改定を決定する際に最も重視した要素としては、「企業の業績」が35.2%と最も高く、次いで「労働力の確保・定着」(14.3%)、「雇用の維持」(12.8%)となっています。
特に、企業の業績を重視すると回答した企業のうち、45.6%が自社の業績を「良い」と評価しており、この好業績が賃上げの追い風になっていると考えられます。
まとめ
今回の調査結果からは、多くの企業が積極的な賃上げに取り組んでいる様子が見て取れます。これは、人材確保や従業員の定着率向上が企業の重要課題となっていることを反映していると同時に、企業業績の回復も賃上げを後押ししている要因と考えられます。
人材獲得競争が激化する中、自社の賃金水準の検討に当たっては、今回の調査結果も参考にしながら、企業の実情に応じた適切な判断が求められるでしょう。特に、定期昇給やベースアップの実施状況、さらには同規模企業の動向なども踏まえた、総合的な検討が重要といえます。