就業規則の周知義務に違反した場合の罰則は?

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就業規則は従業員の労働条件や職場のルールを定める重要な規程です。使用者には、この就業規則を従業員に周知させる法的義務が課せられていますが、この周知義務に違反した場合にはどのような罰則が科されるのでしょうか。本記事では、就業規則の周知義務の内容と、違反した場合の罰則について詳しく解説していきます。

目次

就業規則の周知義務とは

労働基準法第106条・労働基準法施行規則第52条の2では、使用者は就業規則を、労働者が常時見やすい場所へ掲示するか、または備え付けること、書面を交付すること、その他厚生労働省令で定める方法によって労働者に周知させなければならないと定めています。

周知方法として認められているのは、具体的に以下の方法です。

  1. 常時各作業場の見やすい場所へ掲示または備え付けること
  2. 書面を労働者に交付すること
  3. 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

就業規則の周知方法の具体例

就業規則の周知義務を適切に履行するためには、複数の周知方法を組み合わせて実施することが効果的です。まず、最も基本的な方法として、物理的な掲示や備付けが挙げられます。具体的には、就業規則を従業員が日常的に立ち寄る場所、例えば事務所のエントランスや休憩室、更衣室などの目につきやすい場所に掲示します。また、各部署や現場事務所にも就業規則のファイルを備え付けることで、従業員がいつでも必要な時に確認できる環境を整えることが重要です。

近年のデジタル化に対応し、電子的な周知方法も積極的に活用されています。社内イントラネットに就業規則を掲載することで、従業員は自席のパソコンから随時内容を確認することができます。また、専用の電子掲示板システムを導入することで、就業規則の更新情報をリアルタイムで共有したり、従業員からの質問や確認事項に迅速に対応したりすることも可能となります。

さらに重要なのが、個別の周知活動です。新入社員に対しては、入社時のオリエンテーションにおいて就業規則の重要なポイントについて丁寧に説明を行います。また、就業規則の改定を行う際には、全従業員を対象とした説明会を開催し、変更点とその理由について詳しく解説することが望ましいといえます。特に重要な規定、例えば安全衛生や懲戒に関する事項については、定期的に研修を実施することで、従業員の理解を深め、規定の実効性を高めることができます。

周知義務違反に対する罰則

就業規則の周知義務に違反した場合、労働基準法第120条により、30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

この罰則は、事業場への掲示や備え付けを怠った場合、従業員への書面交付を行っていない場合、また電磁的方法による周知を行う際に必要な機器を設置していない場合など、法令で定められた周知方法のいずれも実施していない場合に適用されます。周知義務の違反は、労使間のトラブルにつながるだけでなく、法的な制裁の対象となるということを、経営者・担当者は認識しておく必要があります。

周知義務違反に対する実務上の取扱い

就業規則の周知義務違反に対する実務上の罰則適用については、いくつかの段階的なプロセスが設けられており、違反の発覚後、直ちに罰則が適用されることは稀です。

まず、労働基準監督官による立入調査等で周知義務違反が発見された場合、最初の措置として是正勧告が行われます。企業には、この段階で指定された期限内に違反状態を改善する機会が与えられます。是正勧告に従わない場合でも、すぐに罰則が適用されることはなく、より強い口調での是正指導が行われます。この段階においても、企業は自主的に改善する機会が与えられます。

最終的に罰則が適用されるケースの多くは、これらの行政指導にもかかわらず改善が見られない場合で、実際に罰則が適用されるケースは極めて少ないのが現状です。このように、労働基準監督署は、罰則の適用よりも、企業の自主的な改善を促すことに重点を置いて指導を行っています。

周知義務違反に対する罰則以外のデメリット

就業規則の周知義務違反に関しては、罰則以外にも、企業経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。例えば、懲戒処分や配置転換などの重要な人事措置を行う際に、その根拠となる規定を従業員が知らなかったというケースでは、措置の正当性が問われ、労使間の紛争に発展するリスクが高まります。

さらに、周知義務違反は労使関係全般に深刻な影響を及ぼす可能性があります。就業規則が周知されていない場合、従業員の会社に対する信頼が低下し、労働条件をめぐる不必要なトラブルが発生する可能性があります。また、社内における基本的なルールが適切に共有されていない状況は、労使コミュニケーションの質も低下させ、結果として従業員のモチベーション低下にもつながりかねません。その結果、最終的に企業の生産性や職場環境の悪化をもたらす可能性があります。

周知義務違反を防ぐためのポイント

就業規則の周知義務違反を防ぐためには、計画的かつ継続的な取り組みが必要不可欠です。

まず重要なのは、定期的な確認と更新の実施です。就業規則の掲示状況や備付け状況を定期的に確認し、掲示物の破損や汚れ、電子機器の不具合などがないかをチェックする必要があります。特に就業規則を改定した場合は、すべての掲示場所や備付け場所の更新を漏れなく行うことが重要です。

また、効果的な周知を実現するためには、職場の特性に応じた周知方法の工夫も欠かせません。例えば、若手従業員が多い職場では、社内イントラネットやスマートフォンアプリなどのデジタル媒体を積極的に活用することで、より高い周知効果が期待できます。一方、現場作業が中心の職場では、休憩室や更衣室など、従業員が日常的に利用する場所への紙媒体での掲示を重点的に行うことが効果的でしょう。

さらに重要なのが、従業員の理解度の確認です。形式的な周知に留まらず、従業員が就業規則の内容を正しく理解しているかを定期的に確認することが必要です。具体的には、年に一度程度のアンケート調査の実施や、部署ごとの研修時における質疑応答の機会を設けるなどの取り組みが有効です。理解が不十分な部分が見つかった場合には、追加の説明会を開催したり、解説資料を配布したりするなど、適切なフォローアップを行うことが望しいでしょう。

おわりに

就業規則の周知義務違反に対する罰則は、法律上は「30万円以下の罰金」と定められていますが、実務上は直ちに罰則が適用されることは稀です。しかし、これは周知義務を軽視してよいということではありません。

就業規則は、職場における労使の権利義務関係を定める重要な規程であり、その内容を従業員に適切に周知することは、円滑な労使関係の維持・発展のために不可欠です。

罰則を避けることだけを目的とするのではなく、従業員との良好な信頼関係を構築・維持するための重要な手段として、就業規則の周知を適切に行うことが重要です。定期的な見直しと更新、複数の周知方法の併用など、より効果的な周知方法を工夫することで、職場の円滑なコミュニケーションにつなげていくことができるでしょう。


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