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人材戦略を支える福利厚生 ①「ダイバーシティ、健康経営、人的資本を中心に」
新たに始まりました「人事プロフェッショナルの福利厚生ガイド」。
これは経営の視点から福利厚生を見直し活用していこうという連載です。
私は、福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社、
株式会社労務研究所の可児です。
私がお相手をつとめますサトです。
本日からよろしくお願いいたします。
さっそくですけど、私は会社で人事部にいて、
福利厚生を担当しています。
でも今年から担当になったばっかりで正直福利厚生がよく分かりません。
そもそもなぜ会社が住宅や保養所や食事まで福利厚生で提供するんでしょうか?
福利厚生費を結構かけていますけど、
その分給料で支払った方が社員は喜ぶんじゃないですか?
さっそく質問攻めですね。
どれも福利厚生の大事なところです。
まずは、福利厚生の目的について説明していきましょう。
福利厚生の大きな目的は「人材戦略の実現支援」
サトさんのいうとおり、一見、福利厚生はなくてもいいかなと思えますよね。
でも日本の企業が大企業から中小企業まで、それぞれ福利厚生を実施していますよね。
なぜ手間もお金もかけて福利厚生を実施するのでしょうか?
やっぱり会社にとって必要だからですか?
そうです。
福利厚生は社員のためではなく、会社にとって必要だからやるのです。
大企業から中小企業まで、さまざまな福利厚生を提供しています。
福利厚生は社員が働きやすい環境を作るのが大きな目的ですが、それだけではありません。
実は、福利厚生は企業にとって非常に戦略的な要素であり、その大きな目的の1つが「人材戦略の実現支援」です。
21世紀に入り、働く人々が多様化しています。
そのため、企業も「ダイバーシティ経営」「健康経営」「人的資本経営」といった多角的な人材戦略が必要になっています。
これらの人材戦略を実現する手段が福利厚生なのです。
それぞれの人材戦略が目的であり、福利厚生がその手段である、という点を理解することが経営者・担当者にとって重要なポイントです。
人材戦略と福利厚生の関係性
人材戦略が目的、福利厚生が手段ですね。
そうです。
では、それぞれの人材戦略と福利厚生の関係を見ていきましょう。
まず、企業にとって最も重要な戦略は「経営戦略」です。
経営戦略とは、企業価値を高めるために売上や利益を拡大する全体的な方針や手段です。
例えば、新しい事業分野に進出するや海外での事業拡大がその一例です。
そして、この経営戦略を人材面で下支えして、実現するのが「人材戦略」です。
人材戦略は、新規事業や新規進出地域において必要となる従業員数やスキル、能力を確保する戦略です。
また、労働生産性の向上や組織の活性化も含まれます。
従来のオペレーショナルな人事に対して、「戦略的人事」とも称されています。
福利厚生は、企業の人材戦略を実現するために不可欠な施策手段であり、また、人材戦略は企業が目指す経営戦略を実現するための手段という関係にあるのです。
人事用語の意味に注意
最近、多くの人事用語が増えていますが、それらの意味する中身にも注意が必要です。
もちろん、最初に提唱した経営学者はしっかり定義づけしています。しかし、その用語が日本に入り、人事コンサルタントや人事サービス業者がその用語を広めるうちに,自分なりの解釈が入り、人事の現場では定義がかなりばらけています。
人事用語を使う際には、同じ定義で使用しているかお互い確認する必要があります。
3つの人材戦略を支援する福利厚生
現代の企業が競争力を維持、あるいは拡大するためには、複数の人材戦略が重要です。
具体的には、人的資本経営、健康経営、そしてダイバーシティ経営がその主軸とされます。
これらの人材戦略を効果的に推進するためには、それぞれに合わせた福利厚生の提供が欠かせません。
人的資本経営
この戦略の目的は、社員の能力向上を通じて企業価値を高めることです。
人的資本経営を支援する福利厚生としては、リスキリング(スキルの再編成)の提供や、自己啓発、受検料、受講料の補助があります。
これにより、社員が自らのキャリアを積極的に形成し、より価値の高い仕事を可能にする環境が整います。
健康経営
従業員の健康がその業績に大きく影響を与えるため、健康経営がますます重要視されています。
福利厚生としては、人間ドックの補助やフィットネスクラブの割引など、疾病の予防や健康増進を促進する制度が設けられています。
ダイバーシティ経営
多様なバックグラウンドを持つ従業員が働きやすい環境を整えることで、企業全体の創造性や競争力が高まります。
育児支援や介護支援など、多様なニーズに対応した福利厚生がこの戦略を支えます。
リカレント教育とリスキリングとの違い
近年、急速な技術進化や業界の変化に対応するために、社員個々のスキルや知識のアップデートが求められます。
ここでよく耳にするのが「リカレント教育」と「リスキリング」という二つの用語ですが、これらは何が違い、どのように企業の人材戦略や福利厚生に関わってくるのでしょうか。
リカレント教育
リカレント教育は主に大学や専門機関で教育を受ける形が一般的です。
場合によっては会社を一時的に離れることもあります。この教育形態では、社員の自主性が大いに求められます。
リカレント教育は長期間にわたる教育が多く、より深い知識や専門的なスキルを身につける目的があります。
雇用保険から支給される専⾨実践教育訓練給付⾦はリカレント教育の色彩が強いです。
リスキリング
一方で、リスキリングは主に会社が主導する形で、在職のまま新しい知識やスキルを身につけます。
リスキリングは比較的短期間で、即戦力として活用できるスキルや知識が中心です。
では、業務に関連する自己啓発の支援はリスキリングの一環ですね。
福利厚生は場や機会を提供して、社員をそこに誘導するものです。
「中高年はリスキリングに消極的」という声も聞こえます。
自己啓発の福利厚生の利用は、20代から30代前半が多いんですね。
人的資本経営を実現するには、
福利厚生によるキャリア開発支援が必要です。
福利厚生があって初めて人材戦略が実現できるということですね。
福利厚生は人材戦略の実現支援が目的の一つということです。
次回も引き続き福利厚生の目的についてお話します。
株式会社労務研究所様では、福利厚生の一層の普及・発展を目的に、優れた福利厚生を実施する法人、及びこれから福利厚生の充実を図ろうとする意欲ある企業・団体・自治体を表彰する制度、「ハタラクエール」を提供しています。
これまでに252法人が表彰・認証されており、有名企業も数多く表彰されています。(受賞法人リスト)
採用戦略が重要な経営課題となる中、自社の充実した福利厚生制度を求職者にアピールできる絶好の機会です。
エントリー料は不要ですので、これを機に、ご興味のある方はぜひエントリーしてみてはいかがでしょうか。
なお、今年度の応募は1月末で締め切られました。
次回の応募受付は2024年10月からです。
資料の請求やご相談等は、下記株式会社労務研究所様のHPより直接お問い合わせください。
株式会社労務研究所 代表取締役
~福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
可児 俊信 氏
公式HP:https://rouken.com
ご相談・お問合せはこちらから
1996年より福利厚生・企業年金の啓発・普及・調査および企業・官公庁の福利厚生のコンサルティングにかかわる。年間延べ700団体を訪問し、現状把握と実例収集に努め、福利厚生と企業年金の見直し提案を行う。著書、寄稿、講演多数。
◎略歴
1983年 東京大学卒業
1983年 明治生命保険相互会社(現明治安田生命保険)
1988年 エクイタブル生命(米国ニューヨーク州)
1991年 明治生命フィナンシュアランス研究所(現明治安田生活福祉研究所)
2005年 千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科教授 現在に至る
2006年 ㈱ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長 現在に至る
2018年 ㈱労務研究所 代表取締役 現在に至る
◎著書
「新しい!日本の福利厚生」労務研究所(2019年)、「実践!福利厚生改革」日本法令(2018年)、「確定拠出年金の活用と企業年金制度の見直し」日本法令(2016年)、「共済会の実践的グランドデザイン」労務研究所(2016年)、「実学としてのパーソナルファイナンス」(共著)中央経済社(2013年)、「福利厚生アウトソーシングの理論と活用」労務研究所(2011年)、「保険進化と保険事業」(共著)慶應義塾大学出版会(2006年)、「あなたのマネープランニング」(共著)ダイヤモンド社(1994年)、「賢い女はこう生きる」(共著)ダイヤモンド社(1993年)、「元気の出る生活設計」(共著)ダイヤモンド社(1991年)