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厚労省、101人以上企業に男女間賃金差異や女性管理職比率の公表義務化を検討
厚生労働省は12月16日、労働政策審議会の雇用環境・均等分科会で示された報告資料を公表しました。その資料では、現在、301人以上の企業に対して義務付けられている、男女間賃金差異や女性管理職比率の情報公表について、101人以上の企業にまで対象を拡大する方向であることが明らかにされています。今後、法的整備を含む具体的な措置が講じられる見通しです。
参考(厚生労働省HP:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47189.html)
101人以上の企業へ情報公表義務の拡大
「女性の職業生活における活躍」を実効性のあるものにするため、今回の報告書では情報公表義務の拡大が提言されています。現在、男女間賃金差異の情報公表は301人以上の企業にのみ義務付けられていますが、この範囲を101人以上300人以下の企業にも拡大する方針が示されています。
さらに、賃金差異と並んで重要な指標である女性管理職比率についても、101人以上の全ての企業に新たに情報公表が義務付ける旨が記載されています。女性管理職比率は、単に男女間賃金差異の大きな要因というだけでなく、企業における女性の評価や登用の公正性を示す重要な指標となっています。また、これから活躍を目指す女性たちにとって、身近なロールモデルが存在するかどうかを判断する材料にもなります。
これらの措置は、我が国における男女間賃金差異が国際的に見て依然として大きく、また、管理職に占める女性の割合も国際的に低い水準にとどまっているという現状を踏まえたものです。
なお、情報公表に際しては、単に数値を示すだけでなく、その背景にある要因の分析や、改善に向けた取り組みについても説明を求める方針です。
女性活躍推進法の延長も
報告書では、2016年(平成27年)に時限立法として制定された女性活躍推進法について、その期限を10年間延長することが提言されています。同法は2026年(令和8年)3月末に期限を迎える予定でしたが、なお課題が残るとして、さらなる取り組みの継続が必要と判断されています。
同法は制定以来、一般事業主行動計画の策定・届出の義務付けや、男女間賃金差異の情報公表の義務化など、段階的に制度を拡充してきました。その結果、我が国における男女間賃金差異は長期的に縮小傾向にあり、管理職に占める女性の割合も上昇傾向にあります。
しかしながら、国際的な観点からみると、依然として男女間の賃金差異は大きく、女性管理職比率も低い水準にとどまっているのが現状です。このため、報告書では法の延長とともに、実効性の向上を図るための見直しを行い、さらなる取り組みの推進を図ることが適当であると結論付けています。
報告資料のポイント
今回公表された資料は、主に下記の2つの大きなテーマに分かれています。
- 女性の職業生活における活躍の更なる推進
- 女性活躍推進法の10年間延長
- 101人以上300人以下の企業にも男女間賃金差異の情報公表を義務化
- 女性管理職比率の情報公表の義務化
- 女性の健康支援に関する新たな取り組み
- えるぼし認定制度の見直しと「えるぼしプラス」の創設
- 職場におけるハラスメント防止対策の強化
- ハラスメントを行ってはならないという規範意識の醸成
- カスタマーハラスメント対策の法制化と具体的な定義の明確化
- 就職活動中の学生等へのセクシュアルハラスメント防止対策
- いわゆる「自爆営業」のパワーハラスメント該当性の明確化
今後の展望
これらの施策は、女性の職業生活における活躍をさらに推進し、多様な労働者が能力を十分に発揮できる就業環境の整備を目指すものです。企業にとっては新たな対応が必要となりますが、より公平で活力ある職場づくりにつながることが期待されます。
今後は本報告書を受けて、厚生労働省において具体的な制度設計が進められる見通しです。企業としては、これらの動向を注視しつつ、必要な準備を進めていく必要があるでしょう。