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労災保険の給付基礎日額(平均賃金)の算定方法が一部変更
2024年1月9日、通達の改正により、労災保険の給付基礎日額(平均賃金)の算定方法が一部改正されます。
今回の改正による影響範囲はかなり限られていますが、知っておくことによって労災保険の適切な運用に役立てることができると思います。
これまでの取扱い
労災保険法第8条第1項に基づき、保険給付の額の算定基礎となる給付基礎日額は、労働基準法第12条に定める平均賃金に相当する金額とされています。
そして、労働者が業務上の疾病の診断確定日に既に該当業務を離職していた場合は、基発第556号通達により、離職した日以前3か月間に支払われた賃金を基に算定されます。
また、離職時の支払賃金額が不明な場合は、基発第193号通達により、最終事業場での同種労働者の平均賃金に基づいて算定されることになっています。
ただし、平成22年の基監発0412第1号通達では、労働者が最終事業場を離職し、賃金の記録が確認できない場合は、提出された資料から離職時の標準報酬月額が明らかである場合には、これを基に平均賃金を算定することが認められています。
ここで注意すべき点は、基監発0412第1号通達では厚生年金保険の標準報酬月額に関する資料のみが記載されており、健康保険の標準報酬月額に関する資料は記載されていないということです。
改正の内容
皆さんご存知のとおり、厚生年金保険は健康保険と比べて標準報酬月額の等級区分が狭く、最高等級の標準報酬月額も低く設定されています。そのため、厚生年金保険の標準報酬月額が最高等級に該当する労働者においては、健康保険の標準報酬月額が厚生年金保険のそれを上回る可能性があります。
つまり、0412第1号通達に従って平均賃金を算定する場合、厚生年金保険よりも健康保険の標準報酬月額を用いて算定した方が、受給額が高くなる可能性があるということです。
そこで今回、0412第1号通達の改正により、この点に対する対応が行われました。改正では、厚生年金保険の標準報酬月額に関する資料だけではなく、健康保険の標準報酬月額に関する資料も賃金額の証明資料として利用できるようになりました。
まとめ
今回改正された通達は、労働者が業務上の疾病の診断確定日に既に該当業務を離職しており、かつ、離職時の支払賃金額が不明な場合というかなり限定的な場合に適用される通達です。そのため、企業における日常業務において直接的な影響を受けることは少ないかもしれません。
ただ、知識として持っておくことで、必要な時に迅速かつ適切に対応できるなど、労災保険の適切な運用に役立てることができるようになるでしょう。