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4月から医療費が上がる?マイナ保険証の本格稼働に向けてメリット・デメリットを確認しましょう
来年の秋までに健康保険証が廃止されるというニュースを聞いて、驚かれた方は多いのではないでしょうか。さらに4月からは、マイナ保険証を利用しないと窓口で支払う医療費にも差がでてくることになりました。
今回はマイナ保険証とは何か、メリット・デメリットについてわかりやすく解説していきたいと思います。
マイナ保険証とは
「マイナ保険証」とは、マイナンバーカードに健康保険証の利用登録を行ったものです。
オンライン資格確認を実施する医療機関・薬局の窓口、いわゆる「マイナ受付」で利用することができ、窓口に設置されているカードリーダーにマイナンバーカードを置くことで受付をすることができます。
マイナ保険証とマイナ受付の普及状況
総務省はマイナンバーカードの発行、健康保険証登録、公金受取口座登録を促進させるためにマイナポイント事業を今年の9月末まで延長しています。
その効果もありマイナンバーカードの交付枚数は令和5年4月2日時点で8,449万枚(人口の67.1%)、保険証の利用登録においては令和4年6月に895万件だったのが令和5年4月には5,606万件と6倍以上に増加しています。
マイナ保険証の登録率を人口で見ると44.5%とまだ半数以下ですが、マイナンバーカードの交付枚数でみると67.3%まで増加しています。来年の秋には現行の健康保険証が廃止されることから今後においてさらなる登録数の増加が見込まれます。
またオンライン資格確認を導入している医療機関・薬局も令和5年4月2日時点で67.3%(内訳:病院81.3%、医科診療所59.8%、歯科診療所59.0%、薬局85.8%)とまだ高いとは言えないまでも、着々と準備が進んでいます。
メリット・デメリットの確認
それでは気になるマイナ保険証のメリット・デメリットを確認していきましょう。
マイナ保険証のメリット
顔認証で受付が自動化され不正使用を防止
顔認証付きカードリーダーで受付ができますので、顔認証により確実な本人確認を行うことができ、保険資格の確認も一度に実施されます。
なお、マスク・眼鏡・帽子をしていても、車椅子に乗ったままでも顔認証が可能です。
※機器には顔認証データは保存されません。
データに基づく診療・薬の処方を受けることができる
本人が同意すれば医療機関・薬局は過去の特定健診情報、薬剤情報を閲覧することができ、患者が口頭でそれらを説明する必要がなくなります。
過去のデータを見たうえで診察・薬の処方をしてもらうことできます。
またマイナポータルでは、過去に処方された薬の情報をいつでも見ることができます。
限度額以上の一時支払いの手続きが不要に
窓口での支払いが高額になる場合に、自己負担額を所得に応じた限度額にするために「限度額適用認定証」の提出が必要となりますが、情報提供に同意することで、提出しなくても高額療養費制度における限度額以上の支払いが免除されます。
マイナポータルからe-Taxに連携し確定申告が簡単に
医療費の領収書を管理しなくとも、マイナポータルで「医療費通知情報」を管理でき、e-TAXとの情報連携によりオンラインで確定申告が完結します。
※「医療費通知情報」とは医療機関・薬局を受診し、その窓口で支払った公的医療保険に係る医療費の情報を、マイナポータルでの閲覧や医療費控除の申請で利用可能にした情報です。
転職等のライフイベント後でも継続して使える
新しい医療保険者へ手続き済みであれば、健康保険証としてずっと使うことができます。
ただし転職等で医療保険者が変わる場合は、加入の手続きは引き続き必要です。
国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している方は、定期的な被保険者証の更新が不要になり、「高齢受給者証」の持参も不要になります。
※「高齢受給者証」とは70歳から75歳になるまでの間、自己負担割合を示す証明書です。
医療費の支払いが減る
オンライン資格確認システムの導入を促進させるため、令和5年4月から12月までの期間は、特例措置により初診・再診時の診療報酬の加算額が見直されています。
オンライン資格確認のシステムを導入している医療機関・薬局にて、再診時にマイナ保険証を利用しない場合、今回新たに20円(3割負担の場合は6円)が加算されます。
初診時においてはマイナ保険証を利用しない場合、40円(3割負担の場合は12円)の差が発生することになります。
なお、オンライン資格確認のシステムを導入していない医療機関・薬局については加算がありません。
マイナ保険証のデメリット
マイナ保険証を利用できる医療機関・薬局がまだ6割程度
令和5年4月2日時点において、医療機関・薬局のオンライン資格確認の導入率はまだ67.3%と低く、体制が整っているとは言えません。
「マイナ受付」を実施している医療機関かどうかわからない場合は事前に確認するか、念のためマイナンバーカードと健康保険証を両方持っていく必要があるのではないでしょうか。
紛失した時の個人情報漏洩リスクが大きい?
マイナンバーカードのICチップの部分には、氏名・住所・生年月日・顔写真・12桁のマイナンバーと電子証明書が記録されています。
しかし、税金や年金などのプライバシー性の高い情報は記録されておらず、マイナ保険証に切り替えた後においても特定健診結果や薬剤情報の記録は残りません。
もし、誰かが他人のマイナンバーカードを拾って、情報を読みだそうとしても、本人の設定したパスワードが必要になりますし、パスワードを一定回数間違えると自動的にロックがかかり、情報を読み出せない仕様になっています。
万一、マイナンバーカードに暗証番号を貼り付けて財布に入れ、それを紛失してしまったような場合でも、利用を一時停止するための24時間365日体制のフリーダイヤル受付も体制が整っています。
たとえマイナンバーカードを紛失しても、金融機関のキャッシュカードと同様な管理さえ行っていれば、個人情報が流出してしまうようなリスクが高まることはないようです。
再発行までに時間がかかる
マイナンバーカードを紛失した後は、再発行できるまでに3~4週間を要します。
もし紛失してしまった場合は「個人番号カードコールセンター」に連絡をして、一時利用停止を依頼します。
その後、警察署または交番に遺失届を出し、受理番号の控えを持ってお住まいの市区町村窓口に出向き、再発行の手続きを行います。
もちろんこの期間はマイナ保険証としては利用することができませんので、現行の健康保険証を紛失した場合と同様ですが医療機関を受診した際の医療費は全額自己負担となり、後日清算することになります。
まとめ
マイナ保険証についてメリット・デメリットを確認しましたが、やはり現状においては紛失した時の個人情報漏洩リスクを考えてマイナンバーカードを持ち歩くことに抵抗をお持ちの方が多く、すべての医療機関がマイナ受付を実施しているわけではないこともあり、とりあえず様子見の方も多かったかもしれません。
しかし、行政においてもデメリットに対する対策は日々進歩していますし、多くのメリットがあることは間違いありませんので、ぜひマイナ保険証の登録を行ってみてはいかがでしょうか。
一方、現時点でも様々な課題があることも事実です。
現行の健康保険証からマイナ保険証に切り替わる大きなメリットの一つは、転職等のライフイベント後に本人や扶養家族の保険証が手元から無くなってしまうことがないため、安心して医療機関を受診できることではないかと思いますが、入社時に新たに加入する健康保険組合などで取得手続きが完了しない間は、マイナンバーカードを窓口に持参してもマイナ保険証として利用はできません。
入社する事業所や健康保険組合へご自身のマイナンバーの提出を速やかに行っていないと、マイナ保険証として利用できないという事態も起こり得ます。
4月から診療報酬の加算額が変わり、来年秋の本格稼働に向けて準備は着々と進んできてはおりますが、まだまだ課題は山積みであるため、今後の動向を注視していきたいと思います。