人材戦略を支える福利厚生⑨「ファイナンシャルウエルネスって何?」

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可児先生

「人事プロフェッショナルの福利厚生ガイド」の第9回です。
福利厚生を、人材戦略を支える施策と位置づけ、経営の視点から福利厚生を見直し活用しようという連載です。

可児先生

私は、福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社、
株式会社労務研究所の代表取締役、可児俊信です。

サト

私がお相手をつとめますサトです。
よろしくお願いいたします。

可児先生

さて、最近「ファイナンシャルウエルネス」という言葉をよく耳にします。
どういったものなのか、福利厚生との関係性とは。
詳しく解説していこうと思います。

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目次

ウエルネスとは何か

サト

その「ファイナンシャルウエルネス」って、
言葉自体の意味もよく分からないのですが。

可児先生

強いて日本語に訳せば、堅いですが、経済的健全性でしょう。

サト

そもそもウエルネスとかウエルビーイングといった言葉もよく聞きます。
どう違いますか?

新しい人事用語は、その用語を使う人によって解釈が異なることがあります。ビーイングは進行形なので、その状態が続いている状態です。だから、ウエルネスの状態であることがウエルビーイングといえます。

ウエルネスとは、狭くいえば心と体の健康です。実際に健康と同じ意味でウエルネスを使っている事業者もいます。

サト

でも、そうだったら、わざわざウエルネスっていう必要はないですし、
健康経営という言葉もあるじゃないですか。

今までと同じものでも、切り口を変えることで、時代に合わせた新しい取組みになることがあります。

例えば、人的資本経営もそうです。「経営において人が一番重要」なのは、いうまでもないです。それを投資家に対しアピールすることが重要だというのが人的資本経営という言葉の新しいところです。「当社は従業員を大切にしていますので、成長が期待できます」ということです。今までは、「従業員を大切にしている」ことを外部に示す客観的な指標はなく、福利厚生の充実度をアピールしてきました。

ウエルネスも、心と体の健康だけではなく、もっと広い健全性を意味します。例えば、従業員と回りの人間関係がうまくいくこと、これはソーシャルウエルネスです。従業員と家族の経済関係がうまくいくことがファイナンシャルウエルネスです。総合的な健全性がないと従業員は力を発揮できず、企業も成長しない。だから、総合的な健全性は重要なのです。それを一言でウエルネスといっています。さらにいえばそれを推進する施策が福利厚生です。

可児先生

従業員が会社の成長でもっとも重要という点では、
人的資本経営とも通じるところがあります。

再定義された資産形成支援

ファイナンシャルウエルネスは従業員の家計も資産形成も問題なく、従業員が希望するライフプランの実現にも支障がないこと、また経済的に安定していることです。会社は従業員のファイナンシャルウエルネスの実現を福利厚生等で支援することで、ファイナンシャルウエルビーイングが実現します。

サト

でも、多くの会社ではすでに福利厚生で資産形成支援を充実させています。その目的は何でしょうか?

資産形成支援の主な目的は、従業員が将来に不安がなく働ければ仕事に専念できます。言い換えれば安心して働ける環境づくりです。資産面で明るい将来があれば仕事にも身が入ります。そうした支援をしてくれる会社への感謝も生まれます。資産形成は長期にわたる支援が必要な施策です。よって従業員エンゲージメントや長期勤続に繋がります。これが資産形成支援の福利厚生での目的です。

サト

ちなみに、なぜこのタイミングで
ファイナンシャルウエルネスと言われているのですか?

従業員のウエルネスは、心身の健康、人間関係、経済関係、すべてがそろっていないと実現できず、従業員は力を発揮できません。
産業が製造業からサービス業やITといった産業に移行するなかで、いわゆるヒト、モノ、カネという経営資源のなかでヒトの重要性が格段に増しました。その意味でもヒトを資本と位置づける人的資本経営と同じ発想です。いままでの資産形成支援に、さらに大きな目的が付与され再定義されたということです。福利厚生制度としてすべきことは従来の資産形成支援と変わりません。

資産形成支援の難しさ

サト

でも従業員は、資産形成には関心が薄いです。
ウチの従業員では、1割くらいです。資産運用に関心があるのは。

可児先生

これはすべての人事部・総務部の悩みです。

その原因として考えられるのが従業員は総じてライフプランとかライフイベントにあまり関心がないこと、もうひとつは会社がそれを詳しく従業員に伝え切れていないことが挙げられます。ライフプランニングの必要性を伝え切れていないままでは、従業員によって資産形成への関心度にばらつきがでてしまいます。

サト

会社が資産形成の必要性をもっと強く従業員に訴えてはどうですか?

それをつきつめると、会社からもらう給与や賞与・退職金だけでは不足するという危ない結論になりがちです。悪くいえば、「会社がもっと出してくれれば、老後の不安はないよ」と言われかねません。

いい例として、2019年に「老後2000万円不足問題」がありました。金融庁が「老後までに2000万円貯めておかないと老後資金が不足する」とレポートを出したのです。金融庁はNISAを普及させたいがために、資産形成の重要性を分りやすく示したのです。

サト

当時、マスコミはかなり反発してましたよね…

可児先生

「老後は国が面倒見てくれるのでないか!」と。
必要性の訴求が責任放棄として裏読みされたと思います。

ですから、資産形成を訴求するのは、労使の信頼感が醸成されていることが前提です。会社は「ここまで出せる、やってあげられるから後は頑張ってくれ」といいたいです。従業員がそれを素直に受け取ることができる環境が必要です。

こうした分担を前面に出した「会社はここまでやる。それ以上は自助努力への支援となる」という労使の合意と線引きができていることです。それがないと、会社は伝えきれません。従業員もどこまで自助努力したらいいかわかりません。

可児先生

ファイナンシャルウエルネスが
会社と従業員の信頼感の問題にまでいきつきましたね。

サト

資産形成支援の深さを知りました。

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可児先生

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サト

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<お申込方法などのお問合せ>
株式会社労務研究所 可児俊信:t.kani@rouken.com

執筆者情報

株式会社労務研究所 代表取締役
~福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
可児 俊信 氏

公式HP:https://rouken.com
ご相談・お問合せはこちらから

1996年より福利厚生・企業年金の啓発・普及・調査および企業・官公庁の福利厚生のコンサルティングにかかわる。年間延べ700団体を訪問し、現状把握と実例収集に努め、福利厚生と企業年金の見直し提案を行う。著書、寄稿、講演多数。

◎略歴

1983年 東京大学卒業
1983年 明治生命保険相互会社(現明治安田生命保険)
1988年 エクイタブル生命(米国ニューヨーク州)
1991年 明治生命フィナンシュアランス研究所(現明治安田生活福祉研究所)
2005年 千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科教授 現在に至る
2006年 ㈱ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長 現在に至る
2018年 ㈱労務研究所 代表取締役 現在に至る

◎著書

「新しい!日本の福利厚生」労務研究所(2019年)、「実践!福利厚生改革」日本法令(2018年)、「確定拠出年金の活用と企業年金制度の見直し」日本法令(2016年)、「共済会の実践的グランドデザイン」労務研究所(2016年)、「実学としてのパーソナルファイナンス」(共著)中央経済社(2013年)、「福利厚生アウトソーシングの理論と活用」労務研究所(2011年)、「保険進化と保険事業」(共著)慶應義塾大学出版会(2006年)、「あなたのマネープランニング」(共著)ダイヤモンド社(1994年)、「賢い女はこう生きる」(共著)ダイヤモンド社(1993年)、「元気の出る生活設計」(共著)ダイヤモンド社(1991年)


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私たちは、クライアント数5500社・従業員数880名を超える業界最大級の社労士事務所です。SATO-GROUPでは、従業員数5万人を超える大企業から、個人事業主の方まで幅広いニーズにお応えしております。全国に6か所の拠点を設置し、日本全国どこでも対応が可能です。社会保険アウトソーシング・給与計算・労務相談・助成金相談・就業規則や36協定の整備など、人事・労務管理の業務をトータルサポート致します。

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