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厚労省が長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表
厚生労働省は先日、令和5年度に実施された長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果を公表しました。違反内容や指導状況、是正のための企業の自主的な取り組みなど記載されています。
監督指導の概要
監督指導は、1か月当たりの時間外・休日労働時間が80時間を超えていると考えられる事業場や、過労死等に関する労災請求があった事業場を対象に実施されました。令和5年度は26,117事業場が対象となり、そのうち11,610事業場(44.5%)で違法な時間外労働が確認されました。
参考:厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41656.html)
主な違反内容と指導状況
厚労省の発表によると、違法な時間外労働が11,610事業場(44.5%)で確認され、そのうち月80時間超の事業場が5,675(48.9%)ありました。月80時間を超える時間外労働は、いわゆる「過労死ライン」とされており、労働者の健康に重大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、3,417事業場(29.4%)の事業場では月100時間を超え、737の事業場(6.3%)では月150時間を超える極めて長時間の労働が行われていました。これらの数字は、多くの事業場で過度な長時間労働が行われ、健康被害のリスクが発生していることを表しています。
また、賃金不払残業が1,821事業場(7.0%)、過重労働による健康障害防止措置未実施が5,848事業場(22.4%)で確認されました。さらに、過重労働による健康障害防止措置が不十分な事業場が12,944(49.6%)、労働時間の把握が不適正な事業場が4,461(17.1%)ありました。適切な労働時間管理は、長時間労働を防止し、労働者の健康を守るためにとても重要です。
業種別に見ると、製造業、商業、建設業、運輸交通業、接客娯楽業などで違反が多く見られました。これらの業種では、業務の特性や慣行などから長時間労働が生じやすい傾向があると考えられます。そのため、これらの業種に特化した対策を講じることが重要です。
企業の自主的な取り組み事例
監督指導結果の公表に加え、厚生労働省は長時間労働削減のための自主的な取り組みを行っている企業の事例も紹介しています。
建設事業者の事例
情報共有システムや遠隔臨場システムの導入、ドローンや3Dデータ処理ソフトの活用、電子小黒板ソフトの導入などにより、作業効率を大幅に向上させました。これらの取り組みにより、時間外労働時間が月平均20.49時間から13.1時間に減少し、年次有給休暇取得率も53.1%から57.6%に向上しました。
トラック運送事業者の事例
デジタルタコグラフを活用した労働時間管理、出荷注文締切時間の明確化、鉄道貨物輸送(モーダルシフト)の実施、出荷量の平準化などの取り組みを行いました。これらの取り組みにより、ドライバーの拘束時間や荷待ち時間が大幅に削減され、年次有給休暇取得率も80%超を達成しました。
今後の対策と支援制度
厚生労働省は、引き続き長時間労働の是正に向けた取り組みを積極的に行うとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を実施する予定です。
また、主に中小企業向けの支援制度として、働き方改革推進支援助成金の労働時間短縮・年休促進支援コース、業種別課題対応コース(建設業、運送業、病院等)、勤務間インターバル導入コースが用意されています。これらは、生産性向上や労働時間削減、年次有給休暇の促進、勤務間インターバルの導入など、働き方改革に取り組む中小企業事業主を支援するものです。
長時間労働の是正は、従業員の健康と安全を守るだけでなく、生産性の向上や優秀な人材の確保・定着にもつながる重要な課題です。各企業は、自社の状況を適切に把握し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、効果的な対策を講じていくことが求められます。