厚労省、賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表

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厚生労働省は、このたび、令和5年に賃金不払が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導(立入調査)の結果を取りまとめました。

以下、監督指導での是正事例や送検事例を含む重要なポイントをご紹介いたします。

目次

賃金不払いに関する監督指導結果の概要

令和5年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数は21,349件(前年比818件増)、対象労働者数は181,903人(同2,260人増)、金額は101億9,353万円(同19億2,963万円減)でした。件数と対象労働者数が増加している一方で、金額が減少しているため、一件あたりの不払い額が小さくなっていることが考えられます。

労働基準監督署の指導により、令和5年中に解決されたものは、件数で20,845件(97.6%)、対象労働者数174,809人(96.1%)、金額92億7,506万円(91.0%)となっています。解決率が非常に高く、労働基準監督署の対応が迅速かつ効果的であることを示しています。しかし、依然として約9億円の未払い賃金が残っていることも事実です。

業種別の監督指導状況

業種別の状況を見ると、件数では商業(21%)、製造業(19%)、保健衛生業(15%)が上位を占めています。一方、対象労働者数では保健衛生業(25%)、製造業(23%)、商業(14%)の順となっており、特に保健衛生業で多くの労働者が影響を受けていることがわかります。

金額ベースでは、保健衛生業(21%)、製造業(15%)、商業(14%)が上位を占めています。これらの業種は労働力への依存が大きいという特性を持ち、かつ、多くの従業員を抱える傾向があることから、賃金不払い問題が発生した際の影響が大きくなりやすいと考えられます。

主な是正事例

割増賃金の適正な支払い(食料品製造業)

この事例では、月60時間を超える時間外労働に対する法定割増率(50%以上)の適用や、割増賃金の基礎となる賃金の正確な計算、固定残業代と実際の時間外労働の差額支払いなどが問題となりました。特に、2023年4月から中小企業にも適用された月60時間超の割増賃金率引き上げについて、多くの企業が対応に苦慮している可能性があります。

労働時間の適正な把握(飲食業)

勤怠システムの端数処理機能の見直しや、制服着替え時間の労働時間への算入など、労働時間の適正な把握と計算が求められています。特に、労働時間の過小申告や、労働時間とみなすべき時間の把握漏れは、多くの企業で潜在的に存在する問題かもしれません。

送検事例

定期賃金の長期未払い

短時間労働者7名に対し、14~16ヶ月間で約1,080万円の賃金未払いがあった事例が報告されています。この事例は、最低賃金法第4条第1項違反で書類送検されました。長期にわたる賃金未払いは、労働者の生活に深刻な影響を与えるだけでなく、企業にとっても法的リスクが非常に高いことを示しています。

外国人技能実習生に対する割増賃金の不払い

技能実習生5名の時間外・休日労働時間を過小に偽装し、約330万円の割増賃金の一部不払いがあった事例が報告されています。外国人労働者、特に技能実習生に対する労働法規の遵守は、国際的にも注目される問題であり、慎重な対応が求められます。

まとめ

厚生労働省は、引き続き賃金不払事案の解消に向け、監督指導等を徹底していく方針です。また、倒産、事業主の行方不明により解決が困難な事案については、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づく未払賃金立替払制度を迅速かつ適正に運用していくとしています。

事業主の皆様におかれましては、これらの事例を参考に、自社の労務管理体制を見直す良い機会としていただければと思います。適正な労働時間管理と賃金計算は、従業員の信頼を得るだけでなく、企業の持続的な成長にも不可欠です。


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