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2024年改正|年収の壁撤廃に向けキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」
先日の記事で、政府が年収の壁撤廃に向け、キャリアアップ助成金の新コースを創設する見通しである旨を説明しました。
そして10月3日、キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」に関するパブリックコメントが発出されましたので、内容について解説をします。
そもそも年収の壁とは?
年収の壁とは、パート従業員の年収が一定額以上になることで、課税や社会保険等の対象となり、手取り額に影響が出てしまう問題のことをいい、年収103万円の壁や年収106万円の壁、年収130万円の壁などがあります。
年収106万円の壁とは、パート従業員の年収が106万円以上になることで、社会保険の加入義務が生じ、給与から社会保険料が天引きされるため、手取り額が減少してしまうことをいいます。
手取り額の減少を避けるため、パート従業員の働き控えや就業調整などが生じ、企業の人材不足の大きな原因の1つとなっています。
キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」とは
政府は、年収106万円の壁を撤廃するため、キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」を創設しました。
キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は、労働者の賃上げ等に取り組む企業を助成することで、年収106万円の壁を気にすることなく働ける環境づくりを支援します。
具体的には、労働時間の延長や手当などにより労働者の収入を増加させ、その結果、新たに社会保険の加入義務が生じた場合に、労働者1人あたり最大で50万円を事業主に支給します。
これにより事業主は、年収106万円の壁を気にすることなく、労働者に手当を支給したり、労働時間の延長を命じることが可能になります。
事業主はいくら貰える?
「社会保険適用時処遇改善コース」の助成金額については、手取りなどにより収入を増加させた場合は、最大で労働者1人あたり50万円が支給されます。
また、労働時間の延長により賃金の増加をさせた場合は、労働者1人あたり最大で30万円が支給されます。
さらに、手当などによる収入増加と労働時間の延長を組み合わせた場合は、労働者1人あたり最大で50万円が支給されます。
なお、キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」については、対象となる労働者人数に制限がなく、パート従業員が多く在籍している企業では非常に効果の大きい助成金となっています。
キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」はいつから?
本日発出されたパブリックコメントによると、キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は、2023年10月1日に遡って利用することができるとされています。
最も早く地域別最低賃金の効力が生じる日が10月1日であるため、これに併せて適用できるよう遡及することが認められました。
また、キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は、令和8年3月31日までの暫定措置とされています。
(パブリックコメント:https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000260550)
年収106万円の壁撤廃に向けて社会保険適用促進手当の創設
厚生労働省は、パート従業員の年収106万円の壁撤廃に向けて、キャリアアップ助成金の新コースだけでなく、社会保険適用促進手当を創設する見通しです。
社会保険適用促進手当とは、新たに社会保険の加入対象となった労働者の負担を軽減するため、企業が労働者に支給する手当のことをいいます。
本来、労働者本人が負担しなければならない社会保険料を企業が負担することで、より働きやすい環境づくりを支援します。
社会保険適用促進手当として支給した手当は、社会保険料の算定の基礎から除外されるため、労使双方ともに社会保険料の負担が軽減されます。
また、社会保険適用促進手当についても、キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の適用対象となるため、両制度を併用することも可能です。
年収130万円の壁撤廃に向けて
上述のとおり、厚労省は年収106万円の壁を撤廃するため、キャリアアップ助成金の新コースと、社会保険適用促進手当を創設します。
さらに、年収130万円の壁の撤廃に向けて、年収が130万を超えた場合も、連続して2年間までなら扶養にとどまれる措置を実施する見通し。
正確には、現行の制度下でも一時的な増収であれば扶養にとどまることができますが、要件などを明記することで、より利用しやすくして、働き控えなどを防ぐのが目的です。
まとめ
キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は、労働者が手当や労働時間の延長により社会保険に加入した場合に、事業主に支給される助成金です。
この助成金により、職場のパート従業員は年収106万円の壁を気にすることなく働くことが可能になります。
この助成金は、助成額が労働者1人あたり最大50万円で、しかも、対象となる労働者の人数に制限がありません。
パート従業員が多く在籍している企業では、人材不足解消に大きな効果が生じるでしょう。