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人事プロフェッショナルの福利厚生ガイド⑩「福利厚生と人材確保」
「人事プロフェッショナルの福利厚生ガイド」の第10回です。
福利厚生を、人材戦略を支える施策と位置づけ、経営の視点から福利厚生を見直し活用しようという連載です。
私は、福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社、
株式会社労務研究所の代表取締役、可児俊信です。
私がお相手をつとめますサトです。
よろしくお願いいたします。
この福利厚生連載の読者に対して、
SATO社労士法人でアンケートを行った結果が出ています!
「福利厚生課題の有無と課題の内容」ですね。
福利厚生が薄い、予算が不足している、
福利厚生の周知が足りない、公平性が不足している、
従業員のモチベーション向上と福利厚生の関係が見えない・・・・・。
課題、幅広くないですか?
実は共通しているんです。
今回は、その共通点をテーマにお話していこうと思います。
人材確保と福利厚生活用
「福利厚生が不足している」という回答になっていますが、
着目する点は「何に対して足りないのか」です。
「何に対して足りないのか」。当然、人財の確保に対してです。人財の確保の観点からみて「今の福利厚生は課題があるのでは」ということでしょう。今日は、福利厚生が人財確保にどのように活用すべきか見ていきます。まずこの図表を見てください。
少し古い調査ですが、人件費を給与・賞与、法定福利費、
退職金(・企業年金)、福利厚生費の4つに分けた場合の割合です。
福利厚生費は人件費全体のわずか3%です。
給与・賞与は約54万円ですから、福利厚生費24,125円はその20分の1以下です。経団連の調査、つまり福利厚生が手厚いとされる大企業の結果ですから、給与・賞与に対する福利厚生費の割合は、日本企業全体ではもっと低いかも知れません。
これを逆に見ると、例えば給与を月額1万引き上げても従業員にはさほど増えた感じはしません。でも、福利厚生費を1万円引き上げたなら、福利厚生費が1.5倍近くになるから、福利厚生が大幅に充実し従業員へのインパクトが大きいです。
しかし、今は給与を引き上げる会社が多いです。
2年連続で、給与が引き上げられていますが、円安も一段落すれば企業業績も厳しくなります。そうなると、このまま給与を引き上げられるか分りません。その代わりに福利厚生の活用で担うのです。
人材確保は定着から
図表2のように、人財の確保は新しい社員を採用するだけではなく定着率を高めることでも実現できます。社員の離職が減り、定着すれば新規採用はその分少なくてすみます。そうなれば、採用コストも減るし、厳選採用もできます。つまり人材確保の第一歩は定着なのです。福利厚生に社員が満足すれば、そして働きやすくなれば、従業員の離職は減ります。
その分、新規採用が楽になる!
連載第2回「福利厚生を高めるワークライフエンゲージメント」で、福利厚生を徹底活用して離職率を低下させた病院の事例を紹介しました。看護職が離職していく理由を福利厚生制度の充実でつぶしていくというやり方です。「子どもの送り迎えが大変」という声があれば事務職員が学校まで迎えに行くとか、「看護師のコミュニケーションの場が欲しい」という声があれば、病院の向かいのイタリアンレストランを買収し、医療職・事務職が集まれる場にした、とか紹介しました。
詳細は、株式会社労務研究所の福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」2023年5月下旬号に掲載しています。
このように福利厚生は今、目の前にいる従業員の課題を解決できますから、どんな人が応募するか分らない採用よりも効果を発揮しやすいのです。
福利厚生を活用・充実させて人財の定着を図り、人材確保につなげられるということですね。
福利厚生を活用・充実させて人財の定着を図り、
人材確保につなげられるということですね。
福利厚生をとがらせて人材を確保
さっきも言いましたが、給与の引上げには
そろそろついて行けないという声が強くなっています。
福利厚生費は給与・賞与に比べて原資が少なくて済みます。ということは福利厚生の充実なら、まだまだインパクトを出せるということです。
従業員が世帯主であれば、給与・賞与は重要ですが、世帯主以外であれば、働きやすさや福利厚生による支援を望む従業員も多いです。福利厚生を思いっきり尖らせて、職場の魅力を引き上げて、人材を確保しましょう。
具体的にはどうしますか?
これも私が取材した事例です。
都内のIT企業で従業員は50名前後です。社長は元ITエンジニアで起業してこの会社を経営しています。ですから、エンジニアの従業員がどんな福利厚生を望んでいるかをよくわかっています。
しかも、毎月従業員と会食して福利厚生ニーズも吸い上げています。社長は「社員が使わない福利厚生はつくらない」と言っています。使われる福利厚生だけを行えば費用対効果の高い無駄のない福利厚生が実現できます。資格を取りたければ受検料だけでなく教材費も補助します。新しいITサービスを試したい従業員には月額利用料を補助します。コロナ禍では衛生用品費用も補助していました。
ここまでやれば、従業員も満足し、この会社で働こうと思います。
従業員エンゲージメントで大事なのは、「会社が自分を見てくれている」という感覚です。従業員が望む支援を福利厚生で提供できるなら、従業員の会社への信頼が厚くなります。福利厚生費を増やし制度を思い切り尖らせて、他社と差別化をしましょう。そして人財の定着につなげましょう。
次号以降で各論を話します。
それは楽しみです。
筆者が代表を務める株式会社労務研究所では、福利厚生環境の変化、従業員の多様化の中で、今後の共済会の在り方を考えようとの目的で、共済会事業交流会を創設し、運営しています。
<共済事業交流会の全体の流れ>
- 参加共済会は会場に集まっていただきます。リモート参加も可能です。
- 持ち回りで各共済会による事業内容の報告をいただきます。
皆様、普段は聞けない他社の共済事業についての報告をメモを取りながら真剣に聞いていらっしゃいます。 - 報告に対する質疑応答に移ります。
途切れることなく質疑応答がなされ、自共済会の状況と照らし合わせながら、時間ギリギリまで質疑応答を行われます。 - 懇親会を毎回開催します。熱心に情報交換をされています。
ご参加要項 |
開催頻度:年6回開催 |
年会費:66,000円 |
持ち回りで自共済会の事業内容の報告をお願いします。 |
<お申込方法などのお問合せ>
株式会社労務研究所 可児俊信:t.kani@rouken.com
株式会社労務研究所 代表取締役
~福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
可児 俊信 氏
公式HP:https://rouken.com
ご相談・お問合せはこちらから
1996年より福利厚生・企業年金の啓発・普及・調査および企業・官公庁の福利厚生のコンサルティングにかかわる。年間延べ700団体を訪問し、現状把握と実例収集に努め、福利厚生と企業年金の見直し提案を行う。著書、寄稿、講演多数。
◎略歴
1983年 東京大学卒業
1983年 明治生命保険相互会社(現明治安田生命保険)
1988年 エクイタブル生命(米国ニューヨーク州)
1991年 明治生命フィナンシュアランス研究所(現明治安田生活福祉研究所)
2005年 千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科教授 現在に至る
2006年 ㈱ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長 現在に至る
2018年 ㈱労務研究所 代表取締役 現在に至る
◎著書
「新しい!日本の福利厚生」労務研究所(2019年)、「実践!福利厚生改革」日本法令(2018年)、「確定拠出年金の活用と企業年金制度の見直し」日本法令(2016年)、「共済会の実践的グランドデザイン」労務研究所(2016年)、「実学としてのパーソナルファイナンス」(共著)中央経済社(2013年)、「福利厚生アウトソーシングの理論と活用」労務研究所(2011年)、「保険進化と保険事業」(共著)慶應義塾大学出版会(2006年)、「あなたのマネープランニング」(共著)ダイヤモンド社(1994年)、「賢い女はこう生きる」(共著)ダイヤモンド社(1993年)、「元気の出る生活設計」(共著)ダイヤモンド社(1991年)