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子の看護休暇とは?時間単位の取得や除外について
子育て中の従業員を支援する制度の一つに「子の看護休暇」があります。この制度は、仕事と育児の両立を支援する重要な役割を果たしています。
本記事では、子の看護休暇とは何か、取得日数、時間単位での取得方法、除外規定などについて詳しく解説します。経営者や人事担当者の皆様にとって、制度の理解を深め、適切な運用につなげていただければ幸いです。
子の看護休暇とは
子の看護休暇とは、小学校就学前の子を養育する労働者が、子どもの看護のために取得できる休暇制度です。育児・介護休業法に基づいて定められており、対象となる労働者が申し出れば、事業主は基本的に拒否できません。
この制度の主な特徴として、対象者は小学校就学前の子を養育する労働者であり、子どもが負傷した場合や疾病にかかった場合の世話、さらには疾病の予防を図るために必要な世話(予防接種や健康診断の付き添いなど)を目的としています。法律上は無給の休暇ですが、企業によっては有給として扱う場合もあります。
子の看護休暇は、労働基準法第39条の規定による年次有給休暇とは別に与える必要があります。これは、子どもが病気やけがの際に休暇を取得しやすくし、子育てをしながら働き続けることができるようにするための権利として位置づけられているためです。
子の看護休暇の取得日数
子の看護休暇の取得可能日数は、子どもの人数によって異なります。具体的には以下のようになっています:
- 小学校就学前の子どもが1人の場合:1年度において5日まで
- 小学校就学前の子どもが2人以上の場合:1年度において10日まで
ここで重要なのは、この日数は労働者1人あたりの日数であり、子ども1人につき5日ではないという点です。つまり、子どもが3人いる場合でも、取得可能日数は年10日までとなります。
ただし、これは法定の最低基準であり、企業がこれを上回る日数の取得を可能とする制度を定めることは差し支えありません。例えば、子どもの人数に応じて日数を増やしたり、全従業員に一律で10日以上の取得を認めたりするなど、より柔軟な制度設計を行うことができます。
また、「1年度において」の年度とは、事業主が特に定めをしない場合には、毎年4月1日から翌年3月31日までとなります。ただし、会社の会計年度に合わせるなど、事業主が別途年度の定義を設けることも可能です。
時間単位での子の看護休暇取得
子の看護休暇は、2021年1月1日から、1日単位・半日単位だけでなく時間単位でも取得することができるようになりました。これにより、より柔軟な休暇取得が可能になり、従業員のニーズに合わせた利用が期待できます。
時間単位での取得には、いくつかのポイントがあります。まず、取得可能な時間は始業時刻から連続する時間、または終業時刻まで連続する時間に限られます。また、1日の所定労働時間数を超えない範囲で、1時間の整数倍での取得が可能です。
「中抜け」、つまり就業時間の途中から休暇を取得して就業時間の途中に戻ることについては、法律上は求められていません。ただし、労働者のニーズに応じて、可能な範囲で柔軟な対応が推奨されています。半日単位での休暇取得を認めるなど、より使いやすい制度にすることも検討に値するでしょう。
1日分の時間数の計算には注意が必要です。基準となるのは1日の所定労働時間数で、1時間未満の端数がある場合は切り上げることになります。例えば、所定労働時間が7時間30分の場合、8時間分の休暇で1日分となります。
また、年度途中で所定労働時間数が変更された場合、残りの時間単位の休暇は比例して変更されることにも注意が必要です。例えば、1日の所定労働時間が8時間から5時間に変更された場合、残りの時間単位の休暇も比例して調整されます。
子の看護休暇の除外規定
子の看護休暇制度には、一部の労働者を除外できる規定がありますが、安易に除外することは避けるべきです。除外規定を設ける場合は、従業員の理解を得ながら慎重に進める必要があります。
除外可能な労働者としては、まず日々雇い入れられる者が挙げられます。常時雇用される状態にない日雇い労働者は、法律上除外されます。
また、労使協定により除外可能な労働者として、以下の3つのカテゴリーが定められています:
- 継続して雇用された期間が6か月未満の労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
- 時間単位での子の看護休暇取得が困難と認められる業務に従事する労働者(ただし1日単位での取得は可能)
上記にあげられた労働者以外は除外することはできません。たとえば、期間を定めて雇用される者や配偶者が専業主婦(夫)である労働者などについて、除外することはできません。また、除外可能な労働者であっても、可能な限り制度の対象とすることが望ましいとされています。
特に、入社6か月未満の労働者を除外する場合でも、一定の日数を取得できるようにすることが推奨されています。例えば、入社3か月後から半日単位で取得可能にするなど、段階的に制度を適用することも一つの方法です。
時間単位での取得が困難な業務については、業務の性質や実施体制を客観的に見て判断する必要があります。単に管理が煩雑になるという理由だけでは、除外の正当な理由とはなりません。
子の看護休暇の申出方法
子の看護休暇を取得する際には、労働者は事業主に対していくつかの事項を明らかにする必要があります。具体的には、以下の情報を提供することが求められます:
- 労働者の氏名
- 申出に係る子の氏名及び生年月日
- 看護休暇を取得する年月日(時間単位の場合は開始・終了時刻も)
- 子が負傷・疾病にかかっている事実、または疾病予防のための世話を行う旨
事業主は労働者に対して、申出に係る子が負傷し、若しくは疾病にかかっている事実、または疾病の予防を図るために必要な世話を行うことを証明する書類の提出を求めることができます。ただし、証明書類の提出を求める場合には事後の提出を可能とするなど、労働者に過重な負担を求めることにならないよう配慮する必要があります。
例えば、医師の診断書だけでなく、薬局で購入した薬の領収書なども証明書類として認めるなど、柔軟な対応が求められます。特に、風邪による発熱など短期間で治癒する傷病の場合は、過度に厳格な証明を求めないよう注意が必要です。
申出に関しては、子の看護休暇の利用には緊急を要することが多いことから、当日の電話等の口頭での申出でも取得を認めることが必要です。書面の提出等を求める場合は、事後の提出でも差し支えありません。
子の看護休暇制度の運用上の注意点
子の看護休暇制度を適切に運用するためには、いくつかの点に注意が必要です。
まず、この制度はあらかじめ就業規則などに記載する必要があります。子の監護休暇制度の内容、申出方法、取得可能日数などを明確に定め、従業員に周知することが重要です。
また、労働者の子の症状や勤務状況に応じて、可能な範囲で柔軟な取得を認めることが推奨されています。例えば、半日単位での取得を認めたり、中抜けを認めたりするなどの対応が考えられます。特に、子どもの急な発熱や体調不良に対応できるよう、柔軟な運用が求められます。
子の看護休暇は、介護休業と異なり、取得できる負傷や疾病の種類や程度に特段の制限はありません。風邪による発熱など短期間で治癒する傷病であっても、労働者が必要と考える場合には申出が可能です。事業主側が症状の軽重を判断して取得を制限することはできません。
さらに、法定の日数(子1人の場合5日、2人以上の場合10日)を上回る日数の取得を可能とする制度を設けることは差し支えありません。むしろ、従業員のニーズに応じてより手厚い制度を設けることで、働きやすい職場環境の創出につながる可能性があります。
また、子の看護休暇と年次有給休暇の関係にも注意が必要です。子の看護休暇は年次有給休暇とは別に付与する必要があり、年次有給休暇の取得を理由に子の看護休暇の取得を制限することはできません。
まとめ
子の看護休暇制度は、子育て中の従業員にとって非常に重要な支援制度です。時間単位での取得が可能になったことで、より柔軟な利用ができるようになりました。一方で、一部の労働者を除外できる規定もありますが、可能な限り多くの従業員が利用できるよう配慮することが望ましいでしょう。
経営者や人事担当者の皆様には、この制度の趣旨を十分に理解し、従業員が安心して子育てと仕事を両立できる環境づくりに活用していただきたいと思います。また、法定の基準を上回る制度設計や柔軟な運用を検討することで、より働きやすい職場環境の実現につながるでしょう。