厚生労働省、一般健康診断への歯科項目追加に向けた検討

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近年、従業員の健康管理において、歯科口腔保健の重要性が注目されており、厚生労働省では、労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目に歯科を盛り込むことを検討しています。

今後の法改正等について、企業の人事担当者や経営者にも影響があるかもしれません。

参考「厚生労働省HP:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43771.html

目次

歯科口腔保健と全身の健康との関連

歯周病は、単に口の中の問題だけではありません。研究によると、歯周病は糖尿病、心臓病、脳卒中などの全身疾患と密接な関係があることが分かっています。例えば、歯周病を治療すると糖尿病の症状が改善されたり、歯周病が心臓病のリスクを高めたりすることが報告されています。

また、歯の喪失は、転倒のリスクを高めることも明らかになっています。自分の歯が20本以上ある人に比べて、19本以下で義歯を使用していない人は、2.5倍も転倒しやすいというデータがあります。これは、特に高齢の従業員の安全性に関わる重要な問題といえます。

職場環境と歯科疾患の関係

職場環境が歯科疾患に影響を与える例として、VDT(Visual Display Terminals)作業とTCH(Tooth Contacting Habit:上下歯列接触癖)の関連性が挙げられます。長時間のパソコン作業などで無意識のうちに歯を噛みしめる習慣が付くと、顎関節症などの問題を引き起こす可能性があるとのことです。

実際、ある調査では、企業就労者の顎関節症有病率が16.4%と一般集団よりやや高い値を示しています。特に、ストレスや疲労感、TCHなどが顎関節症の発症に影響を与える因子として抽出されています。

厚生労働省の取り組み

厚生労働省は、これらの問題に対応するため、以下のような取り組みを行っています:

  1. 「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」の改正
    この指針では、歯と口の健康づくりに向けた口腔保健指導が健康指導の項目に含まれることが明確化されました。
  2. 職場の健康診断実施強化月間の実施
    毎年9月を「職場の健康診断実施強化月間」と位置付け、健康診断の実施と事後措置の徹底を呼びかけています。
  3. ストレスチェック制度の拡充
    ストレスチェックの実施者に、必要な研修を修了した歯科医師も追加されました。

企業に求められる対応

これらの動向を踏まえ、企業には以下のような対応が求められます:

  1. 歯科健診の実施
    定期的な歯科健診を実施することで、従業員の歯科疾患を早期に発見し、予防することができます。
  2. 歯科保健指導の導入
    歯科衛生士などによる歯科保健指導を実施し、従業員の歯科口腔保健に対する意識を高めることが重要です。
  3. 職場環境の改善
    VDT作業による影響を軽減するため、適切な休憩時間の設定や、正しい姿勢での作業を促進する取り組みが必要です。
  4. ストレス対策との連携
    歯科口腔保健対策をストレス対策と連携させることで、より効果的な健康管理が可能になります。

おわりに

歯科口腔保健対策は、従業員の健康維持・増進に直結するだけでなく、生産性の向上や医療費の削減にもつながる重要な取り組みです。今後、労働安全衛生法に基づく一般健康診断に歯科項目が追加される可能性も高いため、先進的な企業ではすでに歯科口腔保健対策を導入しています。

経営者や人事担当者の皆様には、これらの動向を踏まえ、自社の健康経営戦略に歯科口腔保健対策を積極的に取り入れることをお勧めします。従業員の健康は企業の最大の資産です。歯科口腔保健対策を通じて、より健康で生産性の高い職場づくりを目指しましょう。


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