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日本とポーランド間の社会保障協定が実質合意へ
2024年9月、日本とポーランドの両政府は社会保障協定の締結に向けて実質的な合意に達しました。この重要な進展は、両国間のビジネス関係や人的交流に大きな影響を与える可能性があります。本記事では、この社会保障協定について解説します。
目次
日・ポーランド社会保障協定の経緯
日本とポーランド間の社会保障協定締結に向けた動きは、以下のように進展してきました。
- 2021年11月:第1回当局間協議(オンライン)
- 2022年7月:第2回当局間協議(オンライン)
- 2023年1月:第3回当局間協議(ワルシャワ)
- 2023年7月:第4回当局間協議(東京)
- 2024年1月:第1回政府間交渉(ワルシャワ)
- 2024年9月:第2回政府間交渉(東京)で実質合意
この経緯からわかるように、両国は慎重に協議を重ね、約3年の期間をかけて実質合意に至りました。
社会保障協定がもたらすメリット
日・ポーランド社会保障協定が締結されると、以下のようなメリットが期待されます:
企業にとってのメリット
- コスト削減:社会保険料の二重払いが解消され、海外駐在員にかかるコストが削減できます。
- 人材活用の柔軟化:社会保障面での負担が軽減されることで、より柔軟な人材配置が可能になります。
- 国際競争力の向上:コスト削減と人材活用の最適化により、国際市場での競争力が向上します。
駐在員にとってのメリット
- 経済的負担の軽減:二重加入が解消され、手取り収入が増加する可能性があります。
- 年金受給権の確保:両国での加入期間が通算されるため、年金受給権を失うリスクが低減します。
- 手続きの簡素化:一方の国の制度にのみ加入すればよいため、手続きが簡単になります。
両国関係へのメリット
- 経済交流の促進:企業の海外展開や投資がしやすくなり、両国間の経済交流が活性化します。
- 人的交流の拡大:個人レベルでの国際的な移動や就労がしやすくなります。
- 二国間関係の強化:協定締結を通じて、両国の外交・経済関係がさらに深まることが期待されます。
そもそも社会保障協定とは
社会保障協定は、国際的な人の移動に伴う社会保障上の問題を解決するために締結される二国間の取り決めです。グローバル化が進む現代社会において、海外で働く人々や国境を越えて事業を展開する企業が増加しています。このような状況下で、社会保障制度の違いによって生じる問題を解消し、国際的な人材の流動性を高めることが社会保障協定の主な目的です。
この協定には、主に以下の2つの重要な機能があります。
- 二重加入の防止
社会保障協定がない場合、海外駐在員は派遣元国と派遣先国の両方の社会保障制度に加入する必要が生じることがあります。これは個人と企業の両方に大きな経済的負担をもたらします。社会保障協定は、原則として一方の国の制度にのみ加入すれば良いとすることで、この二重加入問題を解消します。 - 年金加入期間の通算
国際的に活動する人々にとって、複数国での就労により、それぞれの国で年金の受給資格を得るのに必要な加入期間を満たせないリスクがあります。社会保障協定は、協定締結国間で年金加入期間を通算することを可能にし、年金受給権を確保します。これにより、国際的なキャリアを持つ人々の老後の生活保障が強化されます。
まとめ
日本とポーランド間の社会保障協定の実質合意は、両国の経済関係と人的交流に大きな影響を与える重要な進展です。この協定により、企業の国際展開がより容易になり、個人の権利も適切に保護されることが期待されます。
社会保障協定は、グローバルビジネスを展開する上で重要な基盤となるものです。今回の日・ポーランド間の合意を機に、より広い視野で国際人材戦略を考える良い機会となるでしょう。
参考「厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/stf/pressrelease_nenkin20240920_00001.html)」