育児休業等終了時報酬月額変更届とは?書き方・注意点を解説

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育休明けの従業員の報酬月額について、正しく手続きをしていますか??

 「育児休業等終了時報酬月額変更届」と聞くと、その名前だけでも複雑に感じるかもしれません。従業員が育休から復帰した際には、給与や報酬が変更されることが多く、それに伴い社会保険料にも影響が出ます。この手続きを正確に行うことは、企業にとって法律上の義務であり、適切に対応しないと罰則を受けるリスクもあります。

しかし、その手続きは煩雑で、ミスが許されません。そこで今回は、「育児休業等終了時報酬月額変更届」の重要性、書き方や届出方法、そして注意点について解説し、人事担当者がスムーズに手続きを進められるようサポートします。

目次

育児休業等終了時報酬月額変更届とは?

育児休業等終了時報酬月額変更届は、従業員が育休から復帰した際に、育休前の報酬と復帰後の報酬に差が生じた場合に、社会保険料の算定基礎となる報酬月額を適正にするために、事業主が提出する社会保険の手続きです。

育休から復帰した従業員は、短時間勤務や時間外労働の減少などにより、休業前と比べて給与に変動が生じることがあります。しかし、復帰後も育休前の報酬を基に標準報酬月額が計算されるため、実際の手取り額が減少するケースが少なくありません。

この制度は、育休前と復帰後で給与が異なる場合、従業員の社会保険料が実際の収入に合致するように適正化されることで、従業員の負担を軽減し、社会保険制度の公平性を保つことを目的としています。手続きを怠ると、社会保険料の過払いや不足が発生し、従業員や企業に不利益が生じる可能性があるため、非常に重要な制度です。

対象となる従業員

 この届出が必要となるのは、以下の条件を満たす従業員です。

  • 育休を終えて職場に復帰した
  • 復帰後も3歳未満の子を養育している
  • 育休前の標準報酬額と復帰後の標準報酬額に1等級以上の差が生じている
  • 育休終了日の翌日が属する月以降3カ月のうち、少なくとも1カ月における支払基礎日数が17日以上である
    ただし、パートなどの短時間労働者の場合、3カ月のいずれも支払基礎日数が17日未満の場合には、15日以上17日未満の月の報酬月額の平均を基に算定されます。
  • 「育児休業等終了時報酬月額変更届」の提出を希望している

参照
日本年金機構HP:育児休業等終了時報酬月額変更届の提出 育児休業等終了時報酬月額変更届の提出|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
日本年金機構HP:育児休業等終了後に受け取る報酬に変動があったとき 育児休業等終了後に受け取る報酬に変動があったとき|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

育児休業等終了時報酬月額変更届の書き方

従業員から報酬月額変更届の届出依頼があった場合、企業は迅速に適切な手続きを行う責任があります。

書類記入の手順

育児休業等終了時報酬月額変更届を正確に記入するためには、以下の手順を参考にしてください。

  1. 基本情報の記入:事業所情報、従業員の氏名、被保険者整理番号、個人番号などの基本情報を正確に記入します。日本年金機構HPの記載例にある赤字部分ついては、特に注意してミスが無いように記入しましょう。
  2. 育休の終了日:育休終了日を記入します。この日付は、標準報酬月額の変更時期を判断するために重要です。正確な日付を記入することが求められます。
  3. 給与支給月および報酬月額の記入:育休終了日の翌日が属する月から連続する3カ月を記入してください。そして、各月の給与支払いの対象となった日数と報酬を記入します。3カ月の報酬の合計額と平均額を算出し、正確に記入してください。
  4. 従前の標準報酬月額の記入:従前の標準報酬月額を記入します。適切な等級で計算されるように、正確な金額を記入することが重要です。

日本年金機構HPに掲載されている『記載例』を参考にして、必要な情報が漏れないよう確認しましょう。
(日本年金機構HP「育児休業等終了時報酬月額変更届の記入例」 0000020151djiz96Icc6.pdf (nenkin.go.jp)

提出先と期限について

  • 提出先
    事業所の所在地を管轄する年金事務所または事務センター
  • 添付書類
    原則不要
  • 提出期限
    明確な期限は設けられていませんが、育休終了日の翌日が属する月以降3カ月目の給与支払い後には『速やかに』手続きを行うことが求められています。通常の随時改定(報酬月額変更届)の手続きと同様、遅くとも給与へ反映されるタイミングに間に合うように進めましょう。

育児休業等終了時報酬月額変更届を提出する際の注意点

育児休業等終了時報酬月額変更届は、従業員の希望によりおこなう任意の手続きです。報酬月額が変わっても、必ずしも届出を提出する義務はありません。

育休明けの状況や今後のキャリアプラン、将来の年金額などを考慮し、従業員自身がメリットとデメリットを理解したうえで、提出を判断することが大切です。企業側は、従業員に対してこの制度を正確に説明し、従業員の意思を尊重して手続きを進める必要があります。

将来受け取る年金額が少なくなる可能性があります

報酬月額を変更すると、社会保険料の負担が軽減される一方、将来的に受け取る年金額が減少する可能性があります。標準報酬月額が下がることで、老齢年金の計算基礎となる金額も減少するためです。特に、育休復帰後短時間勤務などで給与が減少する場合、長期的な年金受給額に影響を与えることがあります。

出産手当金や傷病手当金の額が少なくなる可能性があります

出産手当金や傷病手当金は、健康保険の標準報酬月額に基づいて算出されます。標準報酬月額が下がることで、将来従業員が再び出産手当金や傷病手当金を受け取る際、その支給額が減少する可能性があります。特に、育休後に再び妊娠や病気で休業する可能性がある従業員は、この点を考慮する必要があります。

「養育期間標準報酬月額特例申出書」でデメリットをカバー

育休明けに報酬が減り、「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出した場合、健康保険・厚生年金の保険料は下がりますが、将来の年金額に影響が出る可能性があります。しかし、このデメリットを軽減するために「養育期間標準報酬月額特例申出書」を提出することができます。

この申出書を提出することで、3歳未満のお子様を養育している期間中は、報酬額が一時的に減少しても、減額前の報酬額を基に保険料が納付されたとみなされ、年金の計算では休業前の標準報酬月額が適用されます。つまり、育児のために収入が減っても、将来の年金額に大きな影響が出ないようにするための制度です。

まとめ

育児休業等終了時報酬月額変更届は、育休後に報酬が変動した際に、社会保険料を適正に調整するための重要な手続きです。しかし、この手続きは従業員の希望に基づいておこなわれ、社会保険料の負担が軽減されるメリットがある一方、将来の年金額や他の手当金に対する影響といったデメリットも考慮する必要があります。

「養育期間標準報酬月額特例申出書」を活用すれば、育児期間中の収入減少があっても、年金額への影響を最小限に抑えることができます。従業員と企業の双方がこの制度を正しく理解し、最適な判断を行うことが大切です。

育休明けの手続きは複雑ですが、企業側は適切なサポート体制を整え、従業員が安心して育休から復帰できる環境を整えることが求められます。

制度の内容や手続き方法について不安がある場合や、ミスなく迅速に対応したい場合は、専門家である社労士に相談することで、適切な対応が可能です。

従業員とのコミュニケーションを大切にし、制度のメリット・デメリットを十分に理解した上で、正確な手続きを行い、将来のリスクを減らすために必要な準備を進めていきましょう。


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