厚労省、カスタマーハラスメント対策を事業主の措置義務とする議論

社会保険・労務相談・助成金・補助金など人事労務でお困りなら
「SATO社会保険労務士法人」にご相談ください

10月8日、厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、カスタマーハラスメント対策を事業主の措置義務とする重要な議論が行われました。この議論は、企業の経営者や人事担当者の皆様にとって、今後の職場環境整備や従業員保護に大きな影響を与える可能性があります。本記事では、議論の主要なポイントについて解説します。

(参考「厚生労働省HP:雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会 報告書」https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001314149.pdf

目次

カスタマーハラスメントの現状と課題

カスタマーハラスメント、すなわち顧客等からの著しい迷惑行為は、労働者の心身を害するだけでなく、企業にとっても人材流出や顧客離れをもたらすリスクがあります。厚生労働省の調査によると、勤務日にほぼ毎日顧客と接している労働者の17.4%がカスタマーハラスメントを経験しており、過去3年間では全労働者の10.8%がこの問題に直面していることが明らかになっています。

また、調査ではカスタマーハラスメントの主な行為者が顧客等(82.3%)と取引先等の他社の従業員・役員(22.6%)であることが明らかとなっています。これらの数字は、カスタマーハラスメントが単に個別の問題ではなく、企業全体で取り組むべき重要な課題であることを示しています。

事業主の措置義務化に向けた議論

法制化の方向性

労働者保護の観点から、カスタマーハラスメント対策を事業主の雇用管理上の措置義務とすることが適当であるとの見解が示されました。これは、既存の職場におけるハラスメント対策、例えばセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント等と同様の枠組みで対応しようとするものです。この動きは、カスタマーハラスメントが労働者の就業環境を害する重大な問題であるという認識が広まってきたことを反映しています。

カスタマーハラスメントの定義

議論の中で、カスタマーハラスメントの定義について提案が行われました。具体的には、カスタマーハラスメントを以下の3つの要素を満たすものとして定義することが検討されています。

  1. 顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと
  2. 社会通念上相当な範囲を超えた言動であること
  3. 労働者の就業環境が害されること

2の「社会通念上相当な範囲を超えた言動」には、身体的な攻撃(暴行、傷害等)、精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言等)、威圧的な言動、継続的または執拗な言動、拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)などが含まれます。

これらの要素を総合的に判断することで、カスタマーハラスメントを適切に識別し、対策を講じることが可能になると考えられています。

事業主に求められる措置

カスタマーハラスメントに関する事業主の雇用管理上の措置は、既存のハラスメント対策を参考にしつつ、その特性を考慮して検討する必要があります。

一次予防(未然防止)と二次予防(早期発見と適切な対応)の観点から、マニュアル整備や相談対応体制の構築が重要です。

また、行為者が第三者であることを踏まえ、セクハラ対策における他の事業主との協力体制なども参考になります。取引先と消費者の場合で異なる対応が必要な点については、企業の実情を考慮しながら詳細に検討することが求められます。

カスタマーハラスメントに対する総合的な対応

厚労省の議論では、カスタマーハラスメント対策には、企業レベルと業界レベルの両面から総合的なアプローチが必要とされています。個々の企業においては、犯罪に該当し得る行為への毅然とした対応方針の策定と周知、顧客対応力強化のための研修実施、苦情対応マニュアルの整備が重要です。また、業種特性を考慮した対応も求められます。

他方で業界レベルでは、業界団体や職能団体を通じた取り組みの強化が効果的です。特に中小企業支援の観点から、業界一体となった対策が重要です。

さらに、関係省庁の連携強化も不可欠です。取引先との問題、消費者教育、犯罪行為への対応など、多岐にわたる課題に対して、業所管官庁、消費者庁、警察庁等との協力が必要です。「顧客等からの著しい迷惑行為の防止対策の推進に係る関係省庁連携会議」の活用と拡充を通じて、より包括的な対策を検討することが求められます。

おわりに

カスタマーハラスメント対策を事業主の措置義務とする動きは、労働者保護の観点から非常に重要です。一方で、企業にとっては新たな負担となる可能性もあります。しかし、適切な対策を講じることは、従業員の安全と健康を守るだけでなく、企業の評判向上や人材確保にもつながる重要な経営課題といえます。

カスタマーハラスメント対策は、単なるリスク管理ではなく、顧客サービスの質の向上や従業員満足度の増加にもつながる重要な取り組みです。法制化の動向を注視しつつ、自社の状況に応じた対策を実施することで、健全な職場環境の構築と企業価値の向上につなげていくことが可能です。


人事・労務でお悩みなら是非「SATO社労士法人」にご相談ください

私たちは、クライアント数5500社・従業員数880名を超える業界最大級の社労士事務所です。SATO-GROUPでは、従業員数5万人を超える大企業から、個人事業主の方まで幅広いニーズにお応えしております。全国に6か所の拠点を設置し、日本全国どこでも対応が可能です。社会保険アウトソーシング・給与計算・労務相談・助成金相談・就業規則や36協定の整備など、人事・労務管理の業務をトータルサポート致します。

人事・労務管理の業務効率化をご希望の方、現在の社労士の変更をご検討の方、人事担当者の急な退職や休職などでお困りの方はぜひお気軽にご相談ください。

この記事をシェア
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次