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人材戦略を支える福利厚生 ②「福利厚生を高めるワークエンゲージメントとは」
「人事プロフェッショナルの福利厚生ガイド」の第3回です。
経営の視点から福利厚生を見直し活用していこうという連載です。
私は、福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社、
株式会社労務研究所の代表取締役可児俊信です。
私がお相手をつとめますサトです。
今日もよろしくお願いいたします。
前回では、福利厚生は人材戦略を実現するための手段であり、
施策だと分かりました。
経営トップが「人的資本経営」「健康経営」を連呼するだけでは何も変わりません。
従業員がそれを実践できる機会が福利厚生ということになります。
今日はさらにほかの目的も見ていきましょう。
何か楽しみです。
福利厚生の目的は「ワークエンゲージメントの強化」
早速図表を見てください。
福利厚生の実施目的ですか?
上位には従業員の確保とか定着が入っていますね。
それも当然重要な目的ですが、今日は
「企業への信頼感やロイヤリティの醸成」
「従業員の仕事に対する意欲の向上」
このあたりをとりあげます。
これは最近注目されている「ワークエンゲージメント」と
関連ありそうですね。
勤務先への信頼感やロイヤリティが高まれば、当然定着率も高まり、同時に仕事意欲の向上も期待できます。
仕事意欲が向上すれば、労働生産性の向上につながります。
給与での動機付は一過性である
給与を上げることでやる気をたかめようとする経営者もいます。
高い給与は定着率を高めることには繋がります。転職したら給与が下がるからです。
しかし、仕事意欲は高まりますが、一過性かもしれません。
つまり給与が上がった給与明細を見た瞬間は意欲がわきますが、それが持続するかどうかです。
持続しないとしたらその理由は、昇給は一過性の動機付だからです。
昇給したことを忘れてしまう、または昇給後の給与水準を当然のことと思ってしまう。
そうなるともう仕事意欲の向上の動機付にはなりません。
人によって異なる動機付
昇給以外の動機付には何がありますか?
一般にやる気を高める動機付には、2つあります。
会社が従業員に働きかけて意欲を向上させることができる外からの動機付と、従業員の心の在り方に依存し、外部からは働きかけにくい内的な動機付です。
福利厚生の充実は、外的動機付にあたりますね。
働きやすい環境を提供することや割安な福利厚生制度の利用によって実質的な可処分所得の引上げを図ることができます。
例えば、安い使用料で入居できる社宅は典型的な可処分所得の上昇です。
会社が契約するフィットネスクラブや契約リゾート施設を割安に利用するのも同じですね。
一方で,ブラックな会社で、職場環境が悪くても、やる気もある人はいると思います。
これは内的な動機付ですね。
人によって何が動機付けになるか、異なるということです。
ワークエンゲージメントと満足度、忠誠心
ワークエンゲージメントはやる気とは違うんですか?
これまでも「従業員満足度」、「働きがい」、「ロイヤルティ(忠誠心)」、「愛社心」といった類似した人事用語がありました。
どれも仕事のやる気を高めて、定着や労働生産性の向上につながるものです。
いまは、ワークエンゲージメントがよく使われています。
どんな意味ですか?
人によって若干定義が異なります。
人によって解釈が異なるのは当然ですし、自社のサービスに関連付けたいという思いもあるでしょう。
おおまかに言えば、勤務先との相互の信頼関係が醸成され、それによって勤務先への貢献意欲が高まる、仕事意欲が高まるということです。
これまでの満足度や忠誠心などとの大きな違いは、ワークエンゲージメントは測定可能であることが大きな特徴とされていることです。
ワークエンゲージメントの向上を役員の業績評価に加えようとする会社があると新聞で読みました。
ワークエンゲージメントは、従業員向けサーベイなどで測定できるからこそ評価要素にできるということです。
それで注目されているんですね。
福利厚生で高めるワークエンゲージメント
ワークエンゲージメントなどの仕事意欲を外部から高められる外的動機付の手段が福利厚生です。
どう繋がりますか?
自分の仕事が評価されるとうれしいですよね。
これは給与が上がるから、うれしいだけではありません。
「会社が自分の仕事を見てくれている」ことがうれしいんです。
確かに・・・
同じように会社が自分をみていて困ったら助けてくれる、支援する制度が福利厚生制度です。
福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」2023年5月下旬号で、事例が掲載されています。
発行:株式会社労務研究所
簡単に紹介します。事例は病院です。一般に看護師は定着が難しいとされています。
この病院では、職員が抱える課題を吸い上げ、相談できる窓口として「職員サポートセンター」を設置しています。
これは人事・庶務・厚生・研修・社内情報通信・健保組合の各組織を横断・集約したものです。
職員から相談を受けたり、話しているうちに判明した職員の課題に対してセンター内で課題解決を図ります。一つ一つの課題を潰していきます。
センターだけで解決できない場合は上部の組織に図り、組織全体で職員の勤務に関する課題を解決します。
一例を挙げれば、看護師さんが忙しくて、子供の送り迎えができなくて困っていると、病院職員が代わりに迎えに行くといいます。
福利厚生は従業員の課題を解決する手段ですね。
課題は仕事上だけでなく、私生活の課題も含みます。
私生活まで支援できるのは、福利厚生だけですね。
福利厚生制度によって働き続ける上での課題が解決され、退職することなく定着します。
同時に自分の課題に気付き、解決してくれた会社には自分を見て入れくれるという気持ちと、課題解決してくれたという気持ちで仕事への意欲が高まります。
そこまで会社のサポートがあったらうれしいし、感激します。
課題を抱えている従業員を助けることは、給与ではできません。
会社が従業員の課題・困りごとを支援すると、従業員は会社への貢献意欲がわき、仕事にやる気を出し、さらに定着にもつながります。
「会社が自分のことを見ていて助けてくれる」
という感覚はうれしいです。
だったらこの会社のために頑張ろうと思えます。
しかも、先ほどの送り迎えの例で言えば、送り迎えの都度、動機付となります。
福利厚生制度は繰り返し使えますから、継続的持続的な動機付になります。
福利厚生は「見える」人事制度ともいえます。
そこは一過性の昇給と違うところですね。
従業員の仕事上、私生活上の課題を福利厚生によって解決する。
そしてワークエンゲージメントが高まる。
それが従業員にとって定着や仕事への意欲向上の動機付になります。
次回も福利厚生の実施目的をさらに追求します。
株式会社労務研究所様では、福利厚生の一層の普及・発展を目的に、優れた福利厚生を実施する法人、及びこれから福利厚生の充実を図ろうとする意欲ある企業・団体・自治体を表彰する制度、「ハタラクエール」を提供しています。
これまでに252法人が表彰・認証されており、有名企業も数多く表彰されています。(受賞法人リスト)
採用戦略が重要な経営課題となる中、自社の充実した福利厚生制度を求職者にアピールできる絶好の機会です。
エントリー料は不要ですので、これを機に、ご興味のある方はぜひエントリーしてみてはいかがでしょうか。
なお、今年度の応募は1月末で締め切られました。
次回の応募受付は2024年10月からです。
資料の請求やご相談等は、下記株式会社労務研究所様のHPより直接お問い合わせください。
株式会社労務研究所 代表取締役
~福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する出版社
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
可児 俊信 氏
公式HP:https://rouken.com
ご相談・お問合せはこちらから
1996年より福利厚生・企業年金の啓発・普及・調査および企業・官公庁の福利厚生のコンサルティングにかかわる。年間延べ700団体を訪問し、現状把握と実例収集に努め、福利厚生と企業年金の見直し提案を行う。著書、寄稿、講演多数。
◎略歴
1983年 東京大学卒業
1983年 明治生命保険相互会社(現明治安田生命保険)
1988年 エクイタブル生命(米国ニューヨーク州)
1991年 明治生命フィナンシュアランス研究所(現明治安田生活福祉研究所)
2005年 千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科教授 現在に至る
2006年 ㈱ベネフィット・ワン ヒューマン・キャピタル研究所所長 現在に至る
2018年 ㈱労務研究所 代表取締役 現在に至る
◎著書
「新しい!日本の福利厚生」労務研究所(2019年)、「実践!福利厚生改革」日本法令(2018年)、「確定拠出年金の活用と企業年金制度の見直し」日本法令(2016年)、「共済会の実践的グランドデザイン」労務研究所(2016年)、「実学としてのパーソナルファイナンス」(共著)中央経済社(2013年)、「福利厚生アウトソーシングの理論と活用」労務研究所(2011年)、「保険進化と保険事業」(共著)慶應義塾大学出版会(2006年)、「あなたのマネープランニング」(共著)ダイヤモンド社(1994年)、「賢い女はこう生きる」(共著)ダイヤモンド社(1993年)、「元気の出る生活設計」(共著)ダイヤモンド社(1991年)