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時給制の契約社員に寒冷地手当を支給しないという企業の方針について、改正前の労働契約法第20条に違反するかどうかが争われた裁判で、令和5年7月20日、東京地裁は労働者の請求を棄却しました。裁判所は、正社員に寒冷地手当を支給する一方で、時給制の契約社員にはこれを支給しないという労働条件の相違は不合理ではないと判断しました。
(参照:裁判所HP(https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/508/092508_hanrei.pdf))
原告である労働者は、被告企業との間で平成19年に有期雇用契約を締結し、その後、時給制契約社員として更新を繰り返していました。被告企業では、無期雇用の労働者に対しては、勤務地に応じて寒冷地手当を支給していましたが、一報で、有期雇用労働者に対してはこの手当を支給していませんでした。原告労働者は、この取扱いの差異が旧労働契約法20条に違反するとして、不法行為に基づく損害賠償等の支払いを企業に対して求めました。
東京地裁は、有期契約労働者と無期契約労働者との間での労働条件の違いが不合理かどうかを判断する場合、賃金の総額だけでなく、各賃金項目の趣旨も個別に考慮すべきとしました。また、賃金項目の有無や内容が他の賃金項目を考慮して決定される場合があるため、そのような事情も考慮されるべきとしました。
本事案での寒冷地手当の目的は、被告企業は正社員の基本給に勤務地域による差異を設けておらず、寒冷地に勤務する正社員には暖房用燃料費などの生計費の増加が見込まれるため、正社員間の公平を図る趣旨で寒冷地手当が支給されています。これに対し、時給制契約社員の基本賃金は勤務地域ごとに定められており、地域による不公平は発生していないため、寒冷地手当の支給が必要ないと評価されました。
以上の理由から、正社員に寒冷地手当を支給し、時給制契約社員には支給しないことは、労働契約法第20条が定める不合理な労働条件には当たらないと裁判所は判断しました。
旧労働契約法20条は、令和2年4月に働き方改革関連法によって、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(有期労働者法)へ移行されました。有期労働者法では、正社員とパート・有期社員との待遇差が不合理か否かについて、旧労働契約法20条よりも詳細に規定しています。
有期労働者法のもとで、本事案がどのように扱われるかは判例の積み重ねを待つことになりますが、企業においては、労働条件の適正性を定期的に見直し、正社員と契約社員間での不平等が法的に問題とならないよう配慮することが重要です。特に、賃金項目の差異については、その趣旨と合理性を明確にしておく必要があります。
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