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リスキリング支援で使える補助金・助成金5選
2024年4月10日、 Microsoft Corporation は、日本国内の AI 及びクラウド基盤の強化に向けて、今後 2 年間で29 億米ドル(約 4,400 億円 )の投資を行うことを発表しました。さらに、日本社会における AI 活用の促進を目指し、今後 3 年間で非正規雇用を含む 300 万人を対象にリスキリングの機会を提供することや、サイバーセキュリティ分野における日本政府との連携を強化することも発表されました。
2022年に政府が、個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投じる方針を示して以来、多くの企業において学習環境の整備や制度の構築が進められています。そして、この動きは今後ますます活発化するものと予想されます。
本記事では、リスキリングについて解説し、企業が従業員のリスキリングを進める上で支援を受けられる5つの補助金・助成金をご紹介します。これらの補助金や助成金を上手に活用して、自社の従業員のリスキリングを推進しましょう。
そもそもリスキリングとは
リスキリングとは、変化する労働市場や技術環境に対応するため、新たな知識やスキルを学んでいく取り組みです。
経済産業省によれば、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されています。
リスキリングの重要性は、急速な技術の進歩や産業の変化によってますます高まっています。例えば、人工知能(AI)やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進により、多くの伝統的な職種が変化し、新しいスキルや知識が求められるようになっています。さらに、新型コロナウイルスの流行によって、働き方が大きく変わったこともリスキリングの重要性を高めています。テレワークやオンラインでの業務が増える中で、新たなスキルを身につけ、新たな価値を創造する必要性が高まっており、個人はもちろん企業としても重要な課題です。
リスキリングとリカレントの違い
リスキリングと類似した概念として用いられるのが「リカレント教育」です。
「リカレント教育」とは、本来いつでも学び直しを行うことのできるシステムを広く指しますが、就職後も、“働く→学ぶ→働く” というサイクルを繰り返す概念のため、休職などにより職を離れることが前提とされています。
アップスキリング(キャリアチェンジを伴わずに業務上で必要となる新たな知識やスキルを追加的に身に付けること)やリスキリングの双方を含みつつ、職業とは直接的には結びつかない知識やスキルを、自身が必要なタイミングで学び直すことを指します。
リスキリング支援で使える5つの補助金・助成金
企業のリスキリングを推進するため、国や各自治体は様々な補助金や助成金を用意しています。本記事では、企業のリスキリング支援で使える5つの補助金・助成金について、解説していきます。
【人材教育系】
・人材開発支援助成金
・DXリスキリング助成金
・特定求職者雇用開発助成金~成長分野等人材確保・育成コース~
【設備投資系】
・ものづくり補助金
・IT導入補助金
リスキリング支援の補助金・助成金1:人材開発支援助成金
リスキリングでよく使われる助成金の1つに「人材開発支援助成金」があります。『人材開発支援助成金』は、事業主が従業員に対して、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。この助成金には、以下の7つのコースが用意されています。
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
上記のうち、リスキリングを推進する際には、「人への投資促進コース(高度デジタル人材の育成のための訓練や従業員が自発的に受講した訓練などが対象訓練)」や「事業展開等リスキリング支援コース(事業展開やDX等に伴い新たな分野で必要となる知識などを習得させるための訓練)」が有用です。
2024年4月より、「人への投資促進コース」の対象訓練の内容拡充や添付書類の簡素化等の見直しが行われました。詳細を確認し、活用することが重要です。
(参考:厚生労働省HP 『人材開発支援助成金』 人材開発支援助成金|厚生労働省 (mhlw.go.jp))
(参照:厚生労働省HP 『人材開発支援助成金』~人材開発支援助成金を利用しやすくするため令和6年4月1日から制度の見直しを行いました~ 001238038.pdf (mhlw.go.jp))
リスキリング支援の補助金・助成金2:DXリスキリング助成金
『DXリスキリング助成金』も企業のリスキリング支援としてよく活用される助成金です。DXリスキリング助成金は、公益財団法人東京しごと財団が実施している助成金制度です。この制度は、東京都内の中小企業等が従業員に対して、DXに関する研修を実施した際、経費の一部等を助成する制度です。
申請できる企業には、資本金や従業員数の条件があります(中小企業基本法第2条第1項の中小企業者に該当する者やみなし大企業ではないこと)。また、助成額は助成対象経費の4分の3で、助成限度額の上限は、1申請企業等あたり100万円です。上限額に達するまで複数回の申請が可能となります。
(参照:公益財団法人東京しごと財団 DXリスキリング助成金 DXリスキリング助成金 | 東京しごと財団 雇用環境整備課 (shigotozaidan.or.jp))
リスキリング支援の補助金・助成金3:特定求職者雇用開発助成金~成長分野等人材確保・育成コース~
リスキリング支援で使える助成金3つ目は「特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)」。特定求職者雇用開発助成金は、成長分野等の業務に従事させる事業主が、就職困難者(障害者、高齢者、母子家庭の母、就職氷河期世代など)を継続して雇用する労働者として雇い入れ、成長分野の業務に従事させ、職場定着に取り組む場合に支給される助成金制度です。
成長分野の業務とは具体的には、デジタル分野では情報処理・通信技術者、データサイエンティスト、デザイナー(ウェブデザイナー、グラフィックデザイナーに限る)などの業務が該当し、グリーン分野では脱炭素・低炭素化などに関する業務が該当します。
助成額は、採用する労働者(就業困難者)により異なりますが、最大で1人あたり3年間360万円の助成を受けることができます。
(参照:厚生労働省HP 『特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)』 000922236.pdf (mhlw.go.jp))
リスキリング支援の補助金・助成金4:ものづくり補助金
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス補助金)は、中小企業や小規模事業者等が将来にわたって直面するさまざまな制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)に対応し、サービスの開発や生産プロセス改善に伴う設備投資等を支援することを目的とした制度です。
補助金は以下の枠に分かれています。
- 省力化(オーダーメイド)枠
- 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)
- 製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型(DX・GX))
- グローバル枠
これらの中で、リスキリングを推進する際には「製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型(DX・GX))」が有用です。
申請には事業計画書などの提出が必要であり、すべての事業者が利用できるわけではありません。審査を受けて採択される必要があり、公募対象の枠や公募期間も細かく定められています。18次の受付はすでに締め切られていますので、今後の補助金公募の情報収集については、公式サイトの公募要領を確認することが重要です。
(参照:ものづくり補助事業公式ホームページ トップページ|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト (monodukuri-hojo.jp))
リスキリング支援の補助金・助成金5:IT導入補助金
リスキリング支援で使える補助金5つ目は「IT導入補助金」です。IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が業務効率化やDX等を目指してITツール(ソフトウェア、サービスなど)を導入する際に、その費用を支援する制度です。この補助金は、補助金HPに登録されたITツールが対象であり、導入費用だけでなく相談対応やクラウドサービス利用料も支援対象です。
中小企業や小規模事業者は、IT導入支援事業者と連携して申請する必要があります。IT導入支援事業者は、中小企業や小規模事業者に対するITツールの説明や導入サポート、補助金の申請手続きなどをサポートする役割を担います。
IT導入補助金には以下5つの枠があり、それぞれ異なる目的に向けた支援が提供されています。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数社連携IT導入枠
(参照:IT導入補助金2024HP トップページ | IT導入補助金2024 (smrj.go.jp))
まとめ
企業のリスキリングを支援する5つの補助金・助成金についてご紹介しました。従業員のリスキリングは企業成長に不可欠であり、非常に重要な役割を果たします。
しかし、リスキリングを推進するには、十分な資金を必要とします。そのため、政府や自治体は各企業のリスキリング推進を支援するため、様々な補助金や助成金制度を整備しています。これらの助成金を上手に活用し、自社のリスキリングを進めましょう。
ただし、助成金や補助金は、助成対象となる研修や助成対象受講者、助成対象経費などの要件が細かく定められており、条件を満たさなければ受給することはできません。また、手続きの流れについて把握し、申請書類の提出方法や提出期限を正しく守らなければ、助成金や補助金を受給することはできません。そのため、申請手続きは慎重に進める必要があります。
助成金や補助金の申請に不安がある場合は、社労士などの専門家の助言を求めることも有効です。専門家に相談して、助成金や補助金の申請手続きをスムーズに進めるための計画を立てましょう